お金がなくても、お葬式はできるのでしょうか?
経済的な事情で、「葬儀ができないかもしれない」と不安になる方は少なくありません。
しかし、生活保護を受けている方や、そのご家族には、最低限の葬儀を行うための制度=福祉葬儀(葬祭扶助)が用意されています。
私は葬祭ディレクターとしての現場経験を通して、この制度に助けられた方々を何人も見てきました。今回はその福祉葬儀制度について、現場視点で分かりやすく解説します。
福祉葬儀とは?
福祉葬儀(正式名称:葬祭扶助)とは、生活保護を受けている方や、その扶養義務者が経済的に困窮している場合に利用できる制度で、必要最低限の火葬式を行うための費用が自治体から支給されるものです。
支給対象になるには?
- 申請者が生活保護受給者であることが原則
- 故人の資産がほぼ無いこと
- 扶養義務者が葬儀費用を出せない状態であること
この3点を満たすかどうか、ケースワーカー(福祉課の担当者)が確認します。
葬儀の内容は?
- 原則として 通夜や告別式は無し
- 火葬のみ(いわゆる直葬) の形式
- お坊さんを呼ぶ、花をつける、祭壇を飾るなどは不可
制度の趣旨が「必要最低限の葬祭」であるため、“いいとこ取り”はできません。何かを加えたい場合は自費で葬儀を行う必要があります。
利用の流れ
- ご遺族(または関係者)が、役所の福祉課・ケースワーカーに申請
- ケースワーカーが、申請者や故人の経済状況を確認
- 許可が下りた場合、福祉課から葬儀社に連絡が入る
- 葬儀社側からも、ケースワーカーに電話で確認することが通例(名前の聞き取りが必須)
- 火葬日程や搬送などを調整
体調が悪い、看取りが近いと思ったらあらかじめケースワーカーに相談しておくとスムーズです。
よくある誤解と注意点
「生活保護じゃないけど、お金がないから使える?」
– 原則、生活保護を受けていないと利用できません。
申請者が保護を受けていなければ、「自分で葬儀を出せる」と見なされる可能性が高いです。
「どこの葬儀社でもできるの?」
– 制度に対応している葬儀社に限られます。
市が支給する上限内の金額で火葬を受けてくれる業者でなければなりません。
「必要な持ち物は?火葬場には何を持っていくの?」
– 基本的には通常の葬儀と同じく、衣類やお別れの手紙、思い出の品なども可。
ただし、「過度な副葬品」や「宗教的な儀式」などはできません。
制度に頼るのは、恥ではありません
生活保護を受けていること、福祉葬儀を利用することに、後ろめたさを感じる必要はありません。
大切な人を送るという行為に、経済状況の良し悪しで優劣があるわけではないのです。
この制度は、「すべての人が、最低限の尊厳をもって旅立てるように」と設けられたものです。
制度を正しく理解し、必要なときに活用できるよう備えておきましょう。
最後に
葬儀の費用や制度の話は、できれば考えたくないテーマかもしれません。
でも、“そのとき”は、いつか必ずやってきます。
もしものときに慌てないために、そして「できる準備はしておきたい」と思うあなたに、この情報が届けば幸いです。
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