親や身近な人の法事を初めて任されたとき、いちばん迷うのが「お布施はいくら包めばいいのか」というところだと思います。
ネットには金額表がたくさんありますが、地域やお寺との付き合い方で「ちょうどいいライン」は変わります。
ここでは、細かい「何万円きっちり」という話よりも、
・お布施・御車代・御膳料・本堂使用料の役割
・失礼になりにくい金額の決め方
・予算がきびしいときの優先順位
この3つを軸に、「自分の家としてどう決めるか」を一緒に考えていきます。
この記事でわかること
・法事のお布施を考えるときの基本ルール(相場より先に見るポイント)
・四十九日・一周忌など、法要ごとのお布施の「よくある目安」と金額差が出る理由
・御車代・御膳料・本堂使用料をどう位置づけ、いくらぐらいを見ておくか
・「お布施が少ないかな」「払えないかも」と感じたときの考え方とお寺への相談の仕方
3行まとめ
・お布施は「法要への謝礼」、御車代は「交通費+お気持ち」、御膳料は「会食の代わり」、本堂使用料は「場所代」と役割で分けて考える。
・まずはお寺に目安を確認しつつ、「家計として出せる上限」を決め、その範囲で奇数金額に整えると決めやすい。
・予算がきびしいときは、本堂使用料やお布施を軸に、御膳料や会食の内容を調整しつつ、正直に事前相談しておくのがいちばん安心。
お布施・御車代・御膳料・本堂使用料の「役割」を整理する
最初に、「何に対してお金を包んでいるのか」をそろえておきましょう。
・お布施
読経や戒名、法要そのものへの謝礼。お坊さんのご修行とお寺を支えるためのお金です。
・御車代(おくるまだい)/御車料
お坊さんに来ていただくための交通費。電車賃・ガソリン代・タクシー代などに、少しだけお気持ちを添えたもの。
・御膳料(おぜんりょう)
本来なら会食に同席していただくところを遠慮された場合の「お食事代の代わり」。会食1人分と同じか、少し控えめのことが多いです。
・本堂使用料
お寺の本堂を使わせてもらうための「場所代」。料金表が決まっている寺院もあります。
企業サイトはここを一気に金額表にしてしまいがちですが、実際の現場では、
「このお寺との付き合い方」
「その家の無理のない範囲」
を見ながら、住職も柔らかく考えてくださっているケースがほとんどです。
なので、金額だけを暗記するよりも、「役割の違い」と「優先順位」を理解しておく方がブレません。
法事のお布施はいくら包む?目安と“幅”が出る理由
細かい金額表は地域やお寺によって変わりますが、都市部の一般的な例としては、次のようなイメージが多いです(あくまで一つの目安です)。
・四十九日法要 … 3万〜5万円前後
・一周忌 … 3万〜5万円前後
・三回忌〜七回忌… 3万〜5万円前後
・それ以降の年忌… 3万〜5万円前後
同じ四十九日でも、3万円の家もあれば、10万円お包みになる家もあります。
この「幅」が生まれる理由は、だいたい次の3つです。
・その家が檀家としてどれだけ長く付き合っているか
・お寺側が「目安」をあらかじめ伝えているかどうか
・その家の経済状況や、兄弟姉妹との相談結果
お布施は「料金」ではなく「お布施する(差し出す)」お金なので、厳密な正解はありません。
一番現実的なのは、
1 お寺に「みなさんどれくらい包まれることが多いでしょうか」と正直に聞く
2 家計として出せる上限を夫婦・兄弟で話して決める
3 その範囲で、縁起のよい奇数金額に整える
という流れです。
「ダメな金額」はある?奇数・4と9の扱い
お布施の金額でよく質問されるのが、
・4万円・9万円は避けた方がよい?
・偶数はダメ?
といった「タブー金額」の話です。
・4や9は「死」「苦」を連想するので避ける、という考え方は確かにあります。
・一方で、実際の現場では4万円・9万円を包まれても、住職がそれをとがめることはほとんどありません。
こだわるかどうかは地域差もありますが、迷うようなら
・3万円・5万円・7万円などの奇数でそろえる
・2家族でまとめて包むときも、合計が奇数になるように調整する
くらいを意識しておけば十分です。
「うっかり4万円にしてしまった」などの場合は、次の法要で少し多めに包むなど、長いお付き合いの中でバランスを取っていけます。
予算がきびしいときの考え方と優先順位
「相場を調べたけれど、正直その金額はきつい…」というご相談もよくあります。
そんなときは、次のような優先順位で考えると整理しやすくなります。
1 本堂使用料(決まっている場合)
→ お寺の規定として掲示されているなら、ここは基本的に動かしにくい部分です。
2 お布施
→ 法要への謝礼。無理のない範囲で、できるだけ確保したい軸。
3 御車代
→ 距離が近ければ抑えめでもOK。タクシー1往復分+αが一つの物差しです。
4 御膳料
→ 会食に参加されない場合のみ発生するお金。会食の内容をシンプルにして、その分お布施を厚くする、という考え方もあります。
どうしても厳しいときは、事前に正直に相談してしまった方が、お互いに楽です。
「このたびの法要で、お布施をどのくらいお包みする方が多いでしょうか。正直、家計の事情もありまして…目安の下の方でも大丈夫でしょうか。」
こんな一言を電話で添えてもらえれば、住職も事情をくんでくださいます。
見栄で無理をしても、あとが続かなくなってしまうので、「続けられる範囲」を優先して大丈夫です。
御車代・御膳料・本堂使用料の目安と考え方
ここからは、それぞれのお金について、ざっくりした目安と考え方をまとめておきます。
御車代の目安
・同じ市内・電車1本程度 … 5千〜1万円前後
・車で30〜60分程度 … 5千〜1万円前後
・タクシー利用をお願いする距離… タクシー代の実費+数千円
大事なのは「交通費を負担させない」ことです。
実費ぴったりでなくてもかまいませんが、片道だけの金額になってしまわないよう、ざっくり「往復+少し気持ち」をイメージしておきましょう。
御膳料の目安
・会食に参加していただけないとき
→ 会食1人分と同じか、少し控えめ(5千〜1万円前後)のことが多いです。
・もともと会食自体を行わない場合
→ 必ずしも御膳料が必要とは限りません。お寺と相談しつつ、家計とのバランスで決めて構いません。
「毎回必ず御膳料をつけなければならない」という決まりはなく、地域やお寺によって考え方が違います。
迷うときは、「今回の法事では会食をどうするか」とセットで考えると決めやすくなります。
また誰も会食をしなくても、法事に参加することで前後の食事を自宅で取れないことになる場合、僧侶の外食費なども考慮すると善いでしょう。
本堂使用料の目安
本堂使用料は、お寺によってかなり幅があります。
・1万円台のところもあれば
・5万円以上かかるお寺もあります。
お寺側に「本堂使用料:◯万円」とはっきり決められているケースもあるので、ここは素直に確認するのが早道です。
「本堂を使わせていただくにあたって、使用料はどのくらい必要でしょうか。」
と一言電話で聞いておけば、「お布施とは別封筒でお願いします」など、支払い方も含めて教えてもらえます。
金額を決める3ステップ
ここまでの内容を踏まえて、「じゃあ実際どう決めるの?」というところを、3ステップでまとめます。
ステップ1 お寺の“目安”を確認する
・本堂使用料が決まっているか
・過去の法事ではどれくらい包んでいる家が多いか
ステップ2 家としての予算レンジを決める
・香典からの収入見込みも含め、「ここまでなら出しても後悔しない」という金額を決める。
・兄弟で負担する場合は、先にざっくり割り勘のラインを共有しておく。
ステップ3 奇数の金額に整え、御車代・御膳料を足し引きする
・お布施の金額を3万/5万などに決める。
・そこに、本堂使用料(決まっていれば)+御車代+必要に応じて御膳料を加え、総額を見て調整する。
この順番で考えると、「ネットで見た相場」と「自分の家の現実」の折り合いをつけやすくなります。
よくある質問
Q1. 法事のお布施はいくらぐらいが目安ですか?
A1. 満中陰や年忌法要では3万〜5万円前後、月命日や小さい法要は数千円円前後を包むご家庭が多いです。ただしお寺との付き合い方や地域で差があります。まずはお寺に目安を確認し、そのうえで家計として無理のない金額を奇数で決めるのがおすすめです。
Q2. 4万円や9万円など「ダメな金額」はありますか?
A2. 4や9は「死」「苦」を連想するとして避ける考え方もありますが、包んだからといって失礼になるとは限りません。迷う場合は3万・5万・7万などの奇数に整えておけば安心です。
Q3. 御車代と御膳料はいくらぐらい渡せばよいですか?
A3. 御車代は電車賃やタクシー代の往復に、数千円ほど気持ちを添えるイメージで5千〜1万円前後が多めです。御膳料は会食1人分と同程度か、やや控えめな5千〜1万円前後が一つの目安です。
Q4. お布施を相場どおりに払えない場合はどうすればいいですか?
A4. 無理をして相場どおりに包む必要はありません。家計として出せる上限を決めたうえで、「事情があり相場より少なめになるかもしれません」と正直に相談すれば、多くのお寺は状況をくんでくださいます。
まとめとあわせて読みたい記事
お布施まわりは、どうしても「お金」と「信仰」がからむので、きっちりした正解を出しにくい部分です。
だからこそ、
・役割ごとの違いを理解する
・無理のない範囲で、続けられる金額にする
・迷ったら、お寺に正直に相談する
この3つさえ押さえておけば、大きく間違えることはありません。
あわせて、
といったページも読んでいただくと、全体の費用イメージがつかみやすくなると思います。