はじめに
法事が近づくと、まず悩むのが「お返し、どうしよう?」というところだと思います。
どのくらいの金額にして、何を選べばよくて、商品券はアリなのかナシなのか。のしの表書きや、お礼状まで考え出すと、あっという間に頭がいっぱいになります。
この記事では、葬儀社での現場経験をもとに、
・そもそも「法事のお返し」とは何か
・香典とのバランスをどう考えるか
・商品券やギフトカードを使っていい場面・避けたい場面
・のし紙や表書き、お礼状の書き方
まで、実務目線で整理しておきます。
「これくらいなら用意しておけば大丈夫」というラインを一緒に探していきましょう。
この記事でわかること
・法事のお返し(引き出物・粗供養)の基本的な考え方と、香典返しとの違い
・相場の目安と、「会食あり/なし」「親族だけ/友人も参加」での調整の仕方
・商品券・ギフトカード・カタログギフトを使うときの注意点
・のし紙・表書き・名入れの基本マナー
・欠席者への郵送、お礼状や一言メッセージの書き方
3行まとめ
・法事のお返しは、御仏前へのお礼と「供養を分かち合った印」としてお渡しする品物。必ずしも高額である必要はありません。
・相場は「いただいた御仏前の3分の1〜半額」が目安ですが、会食がある場合はやや控えめにするなど、全体の負担バランスで考えるのがおすすめです。
・商品券やギフトカードは、関係性や地域によって受け取り方が分かれるため、目上の方やご年配中心の場合は品物中心にして、使う場合も「品物+少額の商品券」程度にとどめると安心です。
法事のお返し(引き出物・粗供養)とは?
まずは、言葉の整理からしておきます。
法事のお返しとは、一周忌や三回忌などの法要に参列して、御仏前(香典)を包んでくださった方にお渡しする、お礼の品物のことを指します。
「引き出物」「粗供養」「返礼品」など、呼び方はいくつかありますが、基本的な役割は同じです。
・御仏前のお礼
・わざわざ時間を作って参列してくださったことへのお礼
・故人の供養を一緒にしてくださった「印」のようなもの
こうした意味を込めて、帰り際などに品物をお渡しするのが「法事のお返し」です。
葬儀のときの「香典返し」と違うのは、
・葬儀
→ 香典返しとして、後日郵送や、当日まとめてお渡しする品物がメイン
・法事
→ 法要当日の「引き出物」「粗供養」として、その場でお渡しする品物がメイン
というイメージです。
葬儀ほど堅苦しくはないけれど、きちんと感謝を形にしておきたい場面、と捉えると分かりやすいと思います。
法事のお返しは必ず必要?いらない場面はある?
ここが、多くのご家族が一番モヤモヤしやすいところです。
結論からいうと、「参列して御仏前をいただくなら、何かしらのお返しを用意する」が基本です。
・親族やごく近い身内だけの法事
・御仏前は「お気持ちだけで」と伝えている
こういった場合には、一般的な「引き出物セット」ではなく、少し良いお菓子やお茶程度にとどめるケースもよくあります。
反対に、
・ご親戚・友人・仕事関係の方も呼ぶ
・御仏前を広く受け取る
という状況で「全くお返しがない」と、受け取る側が気まずく感じることもあります。
目安としては、
・御仏前を受け取る → 基本はお返しあり
・御仏前を辞退している → 会食やお茶菓子でおもてなし、個別のお返しは不要
このくらいの感覚で考えておくと、大きく外れることはありません。
法事のお返しの相場の考え方
次に、具体的な金額のイメージです。
一般的には、「いただいた御仏前の3分の1〜半額程度」が目安と言われています。
ただし、ここに「会食の有無」が絡んできます。
会食ありの場合
会食付きの法事(お斎・精進落とし)では、
・法要
・会食(食事)
・引き出物(お返し)
この3つをトータルで「おもてなし」として受け取られます。
そのため、引き出物だけでしっかり半返しを狙うというより、
・御仏前1万円 → 会食+引き出物でトータル5千円前後になるよう調整
・引き出物単体は2千円台〜3千円台くらい
といったイメージで考えるご家庭が多いです。
会食なしの場合
お寺だけで法要を行い、会食はしない(持ち帰り折詰のみ、など)場合には、
・御仏前に対して、引き出物で3分の1〜半額程度
・折詰や仕出しがある場合は、その分も含めて「お返し」と考える
といった形で調整します。
親族だけ/友人・知人がいる場合
・親族中心 → ややしっかりめに返す(後々まで気を遣わずに済むように)
・友人・仕事関係者 → 会食の有無に合わせて、一般的な相場レンジの中で用意
というように、「今後の付き合い方」も含めて決めていくと、納得感が出やすいです。
大事なのは、「一人ひとりぴったり半額に合わせる」ことよりも、
全体として無理のない金額に収まっているかどうかです。
法事のお返しの品物の選び方
品物選びは、「重すぎず・軽すぎず・使いやすい」がキーワードです。
よく選ばれるのは、例えば次のようなものです。
・お茶、コーヒー、海苔、佃煮など、日持ちのする食品
・焼き菓子の詰め合わせ
・タオルセット、ハンカチ、日用品
・洗剤やキッチン用品のセット
・少額のカタログギフト など
ポイントは、
・賞味期限にゆとりがあるか
・家に残りすぎない(物が増えすぎない)か
・宗教色が強すぎないか(仏前用線香・ローソクばかりにならないように)
このあたりを意識しておくと、「もらって困らない」ラインに収まりやすいです。
ご自身やご家族が「これなら普通にありがたいな」と感じるものを基準に選ぶのが、一番の近道です。
商品券・ギフトカードはアリ?ナシ?
最近は、「好きなものを選んでもらえるように」と、商品券やギフトカードを検討される方も増えています。
結論だけいうと、
・地域や世代によっては受け入れられている
・一方で、「現金を返しているようで味気ない」と感じる方もいる
という、グレーゾーン寄りの存在です。
使いやすい場面の例
・若い世代や、普段から商品券をよく使うご家庭が多い
・カタログギフトと同じ感覚で受け止められやすい地域
・「品物+少額の商品券」という形で、あくまで「おまけ」的に添える場合
避けた方が無難な場面の例
・目上の親族や、ご年配の方が中心
・昔ながらの価値観を大事にされる家系
・お寺や僧侶に関わる場面での商品券利用
商品券だけをドンとお渡しするより、
・日持ちのする食品や日用品をメインに
・その中にさりげなく少額の商品券を添える
くらいのバランスだと、受け取る側の違和感も少なくなります。
「どう受け取られるか不安だな」と感じるようであれば、無理に商品券にこだわらず、無難な品物でまとめてしまうのも、立派な選択です。
のし紙・表書き・名入れのマナー
のし紙まわりは、「そこまで厳密でなくても大丈夫」という現場感もありますが、基本だけ押さえておくと安心です。
水引の種類
仏事の法事では、
・黒白の結び切り
・関西など一部地域では、黄白の結び切り
がよく使われます。
包装紙の外側にのし紙をかける「外のし」が一般的です。
表書きの書き方
よく使われる表書きは、次のあたりです。
・粗供養
・志
・満中陰志(四十九日法要のとき)
「粗供養」は、「ささやかながら供養のお裾分けです」という意味合いです。
「志」は、「気持ちばかりですが」という、少し柔らかいお礼のニュアンスになります。
どちらでも失礼にはあたりませんが、
・仏式の四十九日前後 → 満中陰志
・それ以降の年忌法要 → 粗供養 or 志
と覚えておくと、迷いにくくなります。
名入れの書き方
のし紙の下段には、
・基本は施主の名字
・夫婦連名にする場合は、「◯◯家」または夫の名字のみ
・兄弟姉妹で連名にする場合は、「◯◯家一同」のようにまとめる
このような書き方が多いです。
地域やお付き合いの慣習によって細かな違いもあるので、「迷ったら、親族の過去の例を真似る」くらいの気持ちで十分です。
お返しを渡すタイミングと渡し方
渡すタイミングは、「お見送りのとき」が基本です。
・法要と会食が終わり、帰られる方を玄関口で見送る際にお渡しする
・会食には参加せず、法要だけで帰られる方にも、このタイミングでお渡しする
という形が一般的です。
親族など、ごく近い方には、
・控室や座敷などでまとめてお渡しする
・遠方の方には「持ち帰りやすい重さ・大きさ」に配慮する
といった意識を持っておくと、親切さが伝わりやすくなります。
欠席や遠方の人へのお返しはどうする?
法事には出席できないけれど、御仏前だけ郵送や現金書留でいただくこともあります。
この場合、
・法事の前後〜1か月以内を目安に
・お返しの品物+簡単な挨拶状を添えて
・宅配便などでお送りする
という形が多いです。
中身は、参列者にお渡しする引き出物と同等か、少しだけ良いものにしておくと、気持ちのバランスがとりやすくなります。
送料や包装代はこちらで負担するのがマナーです。
お礼状・一言メッセージの書き方
法事のお返しに必ずしも長いお礼状は必要ありませんが、一言添えておくと印象がやわらぎます。
文例1(参列してくださった方向け)
拝啓
先日の◯◯回忌法要ではご多用のところご参列いただき、誠にありがとうございました。
おかげさまで、無事に法要を終えることができました。
心ばかりではございますが、供養のしるしとして品をお贈りいたしますので、ご受納いただけましたら幸いです。
今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
文例2(欠席で御仏前だけ頂いた方向け)
拝啓
このたびは◯◯回忌に際し、ご丁重なる御仏前を賜りまして、誠にありがとうございました。
お心遣いをありがたく頂戴し、先日の法要にて手を合わせさせていただきました。
ささやかではございますが、供養のしるしとして品をお送りいたしますので、ご笑納いただけましたら幸いです。
今後とも変わらぬご厚情のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
仏事では句読点を打たない書き方もありますが、最近はそこまで気にされないことも多いです。
相手との距離感や、過去にいただいた挨拶状の雰囲気に合わせて、無理のない形を選んでください。
よくある質問
Q1. 法事のお返しは、香典返しとは別に必ず用意しないといけませんか?
A1. 葬儀の香典返しとは目的が違うので、法事に参列して御仏前をいただく方には、原則として当日の引き出物(粗供養)を用意します。ただし、四十九日と一周忌を合同で行う場合などは、香典返しを兼ねて少し内容を良くするなど、まとめて考えるケースもあります。
Q2. 夫婦や家族で包まれた御仏前も、1人ずつお返しを用意すべきですか?
A2. 御仏前を1つの袋でいただいた場合は、お返しも1つでかまいません。夫婦連名や「家族一同」で包んでくださることも多いため、その場合は世帯ごとに1つずつお渡しするイメージで考えると整理しやすくなります。
Q3. 商品券やギフトカードだけのお返しは失礼になりますか?
A3. 絶対に失礼というわけではありませんが、目上の方やご年配が多い法事では、「現金を返しているようで味気ない」と感じられることもあります。できれば日持ちする食品や日用品をメインにし、「品物+少額の商品券」という形にとどめると安心です。
Q4. お返しを渡しそびれてしまったときは、どうしたらいいですか?
A4. 気づいた時点でかまいませんので、品物と一緒に「お渡しが遅くなってしまい申し訳ありません」という一言を添えて宅配便などでお送りすれば大丈夫です。スピードよりも、「きちんとお礼を伝えよう」とする姿勢の方が大切です。
[PR] 法事のお返しをネットで用意したいときの候補
法事前は買い出しに出る時間も取りづらいので、ネットでまとめて揃えてしまうご家庭も増えています。
「日持ちする・重すぎない・世代を問わず使える」ものを中心に選ぶと安心です。
まとめ|「きっちり半返し」よりも、無理のない感謝の形で
法事のお返しは、どうしても「相場」「マナー」「失礼にあたらないか」と、細かいところが気になりやすい場面です。
ただ、現場でたくさんの法事を見てきた感覚としては、
・金額が多少前後していても、丁寧に準備されたことは伝わる
・「もらって困らないもの」を選べば、大きく外れることはない
・一言でも感謝の気持ちが添えられていると、印象がやわらぐ
この3つさえおさえておけば、十分だと思っています。
悩みすぎてご家族が疲れてしまうよりも、
「このくらいなら用意できる」というラインで、背伸びしすぎないお返しを整えていくことが、長い目で見てもいちばんの供養になります。
この記事が、「法事のお返し、どうしよう…」という気持ちを、少しでも軽くする手がかりになればうれしいです。

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