法事の会食、する?しない?
仕出し・お店・御膳料まで「迷ったときの決め方」ガイド
法事が近づくと、「お坊さんへのお布施」や「参列者へのお返し」と並んで悩みやすいのが、法要後の会食です。
どこで食べるか、誰を呼ぶか、仕出しにするかお店にするか、そもそも会食をするべきなのか…。考え始めると、あっという間に頭がいっぱいになります。
でも、法事の会食には「こうしなければいけない」という絶対の決まりはありません。
家族の事情や、集まる人の年齢・距離感・予算に合わせて、無理のない形を選んで大丈夫です。
この記事では、葬祭ディレクターとして現場で見てきたケースをもとに、
・法事の会食の基本的な流れ
・仕出し・お店・会食なし(御膳料)の選び方
・メニューと費用の目安
・献杯の簡単なやり方
・トイレや動線まで含めた、現場で起こりやすい「困った」を減らすコツ
を、できるだけやさしく整理しました。
なお、お供え物については別の記事「法事・法要のお供えは何がいい?花・お菓子・金額・掛け紙の基本ガイド」でまとめています。合わせて読んでもらうと全体像がつかみやすくなります。
「うちの場合はどんな形がいちばんラクだろう?」と、自分のペースで考えながら読んでみてください。
この記事でわかること
・法事の会食に参加する人・時間帯・基本的な流れ
・仕出し/お店/会食なし(御膳料)それぞれの判断基準
・メニューと費用の大まかな相場
・献杯(乾杯との違い)と、短い挨拶の例
・トイレ・移動・キャンセルなど、現場で起きがちなトラブルを減らすポイント
3行まとめ
・法事の会食は「距離感」と「予算」で決めてOK。正解はひとつではない。
・仕出しでもお店でも、「年配の方が移動しやすいか」「トイレに行きやすいか」を最優先。
・会食なしも一般的。御膳料やお菓子を添えれば、マナー違反にはならない。
法事の会食の基本(誰が参加する?時間は?流れは?)
がんばって立派にしようとしすぎると、準備する側が一番疲れてしまいます。
近しい人たちが、無理のない範囲で集まって、少しほっとできる時間になれば十分です。
誰が参加するのか
法事の会食に参加するのは、基本的には親族が中心です。
・喪主・遺族
・故人の兄弟姉妹
・いとこなど、日頃から付き合いのある親族
友人やご近所まで広く招くケースもありますが、「法要には来ていただき、会食は親族だけ」という形もよくあります。
人数を増やすことより、「このメンバーなら気を遣いすぎないで済むな」という範囲で考えてみてください。
時間帯の目安
多いパターンは、
・午前中にお寺や会館で法要
・そのまま昼食の会食へ移動
という流れです。
午後からの法要の場合は、
・少し早めに始めて、15時前後に軽めの会食
・夕方前に解散できるように調整
といった形が多いです。
遠方から来る人が多い場合は、「何時ごろなら無理なく来られるか」「帰りの電車に間に合うか」を一つの目安にしてみましょう。
会食の流れと席次の考え方
席順については、昔のように細かい席次表を作るご家庭は少なくなりました。
「年長の方を上座寄りに」「喪主家族は入口側」くらいの感覚で十分です。
現場でよく意識しているポイントは、次のあたりです。
・足腰の弱い方は、出入り口やトイレに近い席に
・トイレが遠い会場なら、途中で立ちやすい“端の席”に高齢者を優先
・小さなお子さん連れは、他の方に迷惑をかけないよう、出入りしやすい壁側・端側に
「誰を上座にするか」よりも、「誰が動きやすいか」「困った時にすぐ立てるか」を意識した方が、皆さん安心して過ごせる印象があります。
仕出し・会場選び(お寺/会館/自宅/お店)
移動や階段、トイレの位置など、当日の「動きやすさ」は、年配の方や小さなお子さんにとってとても大切です。
まずは、法要を行う場所と、会食候補の場所との距離感をざっくりイメージしてみましょう。
法事の会食場所は、大きく分けて次の3パターンがあります。
・法要をした会場(お寺・会館)の一室で仕出し料理
・自宅に仕出しを取る
・近くの和食店や会席料理のお店の個室を利用する
それぞれのメリット・注意点を見ていきます。
仕出しを利用する場合
仕出しの一番のメリットは、「移動がほとんどない」ことです。
・法要をしたお寺や会館の一室で、そのまま食事
・高齢の方も移動距離が少なくて済む
・エレベーターがあれば、階段の上り下りも少なくできる
一方で、こういったポイントは確認しておきたいところです。
・部屋の広さに対して人数は収まるか
・トイレが同じフロアにあるか、段差はないか
・靴を脱ぐ座敷か、イス席か(足腰が弱い方にはイス席がラク)
・片付けを仕出し業者がどこまでやってくれるか
お寺や会館で会食をする場合は、事前に
・何名まで座れる部屋か
・料理はどこに頼むか(指定の業者があるか)
・飲み物は持ち込みか、会場側で準備か
を担当者に聞いておくと、当日にバタバタしにくくなります。
自宅に仕出しを取る場合
故人の家や喪主の家が広く、親族が集まりやすい場合は、自宅での会食もよくあります。
・小さなお子さんがいても気兼ねしにくい
・靴を脱んで、少しリラックスした雰囲気になりやすい
・移動が少ない分、高齢の方の負担が軽い
一方で、
・座る場所やテーブルの数を事前に確認する必要がある
・片付けは家族側の負担が増えやすい
・駐車スペースが限られることがある
といった点も出てきます。
「家での会食は準備が大変そう」と感じる場合は、無理に自宅で頑張る必要はありません。
お寺の一室や近くのお店を使った方が、かえって喪主家族もゆっくり故人の話ができることも多いです。
お店(飲食店)を利用する場合
外のお店の個室や半個室を利用するケースも、都市部ではかなり増えてきました。
メリットとしては、
・温かい料理がタイミングよく出てくる
・片付けから配膳までお店にお任せできる
・イス席が基本なので、足腰の弱い方も座りやすい
一方で、事前に確認しておきたいのはこんな点です。
・最寄り駅やお寺・会館からの距離(徒歩でどれくらいか)
・駐車場の台数、駐車場から店内までの段差や階段
・トイレの場所(階段を使うかどうか)
・靴を脱ぐ座敷席か、イス・テーブル席か
・個室料や飲み物代のシステム(飲み放題か、単品か)
高齢の方やトイレが近い方がいる場合、
「トイレに行くのに階段を何段か上り下りする」だけで、かなりしんどそうにされることがあります。
予約時に「トイレに行きやすい席にしてもらえますか」と一言添えておくと、店側も配慮しやすくなります。
会場費・送迎・キャンセル規定
会場を決めるときは、料理代だけでなく、
・個室料やサービス料の有無
・マイクロバスや送迎車がつくかどうか
・何日前まで人数変更・キャンセルができるか
もセットで確認しておくと、後から慌てなくて済みます。
特に人数確定については、仕出し・お店とも「◯日前までに最終人数を」と言われることが多いです。
招待したい人には、少し早めに出欠の返事をお願いしておきましょう。
メニューの決め方と費用の目安
「せっかくだから、きちんとしたものを出さないと」と考えすぎると、プレッシャーになってしまいます。
見栄を張るよりも、「その人たちが食べやすいか」を一番に考えてあげれば、それで十分です。
一人あたりの相場感
地域やお店によって差はありますが、目安としては次のような価格帯が多いです。
・仕出しの和食膳 … 1人 4,000〜7,000円前後
・会席料理(お店)… 1人 6,000〜10,000円前後
忌明け(四十九日)や一周忌など節目の法要では、少し良いコースを選ぶご家庭もあります。
とはいえ、「お布施やお供えもあるから、会食は控えめで」と考えるのも、ごく自然な選択です。
「自分たちの家計のペースで出せる範囲かどうか」を、一つの物差しにしてみてください。
香典の金額そのものに迷っている場合は、「香典相場の早見表と正しい書き方(表書き・中袋・連名まで)」の記事も、合わせて参考にしてもらえるとイメージしやすくなります。
メニューを選ぶときのポイント
法事の会食メニューは、派手さより、
・年配の方でも食べやすいか
・味つけが濃すぎないか
・生ものが苦手な人でも何かしら食べられるか
といったところを押さえておくと安心です。
・お刺身・煮物・天ぷらなど、よくある和食中心で十分
・高齢者が多い場合は、脂っこい肉料理よりも魚多めに
・固いもの、辛すぎるものは控えめに
最近はアレルギーや宗教上の理由で食べられないものがある方も少なくありません。
分かっている範囲で、
・卵・乳製品・小麦・甲殻類などアレルギーの有無
・「生ものが苦手」「お肉が食べられない」などの好み
を、事前に家族内で共有しておき、仕出し業者やお店に「この方だけ少し変えてほしい」と相談すると、対応してもらえることが多いです。
子ども用メニューと過ごし方
小さなお子さんがいる場合は、
・お子様ランチ風のプレート
・量少なめのコース
・うどんや丼ものなど、食べ慣れたメニュー
などが用意できるか、あらかじめ確認しておくと安心です。
会食の時間は、大人にとっては「あっという間の1時間」でも、子どもにとっては長く感じることがあります。
静かなおもちゃや絵本、タブレットなどを用意しておき、
・トイレに行きやすい席
・途中で少し外に出られる位置
に座ってもらえると、親御さんも心に余裕を持ちやすくなります。
PR:子連れ・長時間の会食を少しラクにしてくれるグッズ
「子どもを連れての会食は、それだけでひと仕事」ですよね。
少しでも親御さんの負担を減らすために、こんなアイテムがあると助かります。
・黒〜紺の子ども用カーディガン
冷房対策もしつつ、普段着のワンピースやシャツの上に羽織るだけで、ぐっと“法事っぽい”雰囲気になります。
👉子ども用フォーマルカーディガン
・音の出ないシールブックやお絵かきボード
会食中、じっとしているのが苦手なお子さんの“時間つぶし役”に。音が出ないタイプを1つカバンに入れておくと安心です。
👉シールブック・お絵かきボード
・黒系の小さめリュック/サブバッグ
おむつ・おやつ・おもちゃをひとまとめに。親御さん自身の荷物とは分けておくと、移動のたびに探し物をせずに済みます。
👉子ども用黒リュック・サブバッグ
・保護者用の携帯スリッパ
お寺・会館・お店を出入りするとき、足元を気にしなくてよくなるアイテムです。ヒールを脱いで歩けるだけでも、かなりラクになります。
👉携帯スリッパ
全部そろえる必要はなく、「今後も使えそうなものを1〜2個だけ足してみる」くらいの感覚で大丈夫です。
献杯(乾杯との違い/挨拶例)
「言葉が苦手で…」という方も多いですが、献杯の挨拶は長くなくて大丈夫です。
短く、故人への感謝と、集まってくれた人へのお礼が一言入っていれば十分です。
乾杯との違い
法事の会食で使うのは、お祝いの席の「乾杯」ではなく、「献杯(けんぱい)」という言葉です。
・乾杯…結婚式や宴会など、お祝いの場で使う
・献杯…故人に杯を捧げる意味合い
声を張り上げて「かんぱーい!」とやる必要はありません。
少しトーンを落として、「それでは、故人をしのびまして、献杯」と締めるくらいでちょうどいい雰囲気になります。
立ち上がるかどうかは、会場や参加者の様子を見て決めて構いません。
高齢の方が多く立ち上がるのが大変そうなら、「そのままの姿勢で結構ですので」と添えて、座ったまま献杯にしても問題ありません。
献杯の挨拶を誰がするか
多いパターンは、
・喪主
・喪主に近い親族(長男・長女・兄弟姉妹など)
です。
「人前は本当に苦手」という場合は、信頼できる親族にお願いしておくのも一つです。
短い挨拶の例
紙にメモして読み上げても失礼にはなりません。
一例ですが、こんな形なら覚えやすいと思います。
例1)
「本日はお忙しい中、◯◯のためにお集まりいただきありがとうございます。
ささやかではございますが、皆さまと共に◯◯をしのびながら、ゆっくりとお過ごしいただければと思います。
それでは、◯◯への感謝を込めまして、献杯。」
例2)
「本日はお足元の悪い中、◯◯の法要にご参列いただき、ありがとうございました。
生前お世話になった皆さまと、こうして席を共にできることを、家族一同うれしく思っております。
どうぞ思い出話なども交えながら、ごゆっくりお召し上がりください。
それでは、献杯。」
難しい言葉を並べる必要はありません。
「ありがとう」と「ゆっくりしてください」が伝われば、それで十分です。
会食なしの場合|御膳料(会食代わりの心付け)
最近は、仕事や距離、体調の事情などから「会食は行わない」というご家庭も増えています。
会食をしないからといって、失礼にあたるわけではありません。
会食なしが選ばれやすいケース
たとえば、こんな状況では、あえて会食をしないほうがラクなことも多いです。
・高齢の親族が多く、長時間の外出が負担になる
・遠方からの日帰り参加が多く、ゆっくり食事をする時間が取れない
・小さいお子さんが多く、長時間の会食が不安
・家計と相談して、今回は全体的に控えめに整えたい
そんなときには、「法要だけ行い、会食の代わりに御膳料をお渡しする」という形がよく選ばれます。
御膳料やお布施全体のバランスについては、「法事のお布施はいくら包む?金額の考え方と御車代・御膳料・本堂使用料の目安」の記事で、より具体的に整理しています。
御膳料の相場と組み合わせ方
御膳料の目安は、
・1人あたり 3,000〜5,000円前後
くらいを考えておくと分かりやすいです。
そこに、
・少し良いお菓子の詰め合わせ
・お茶や海苔、日持ちする食品
などを組み合わせて、「御膳料+手土産」としてお渡しするご家庭も多くあります。
親族への伝え方の例
会食を省略する場合は、事前にひと言添えておくと、相手も予定を立てやすくなります。
「今回は高齢の方や遠方からの方も多いため、法要のみとさせていただき、会食は行わない予定です。
その代わり、ささやかですが御膳料を用意させていただきますので、お受け取りいただければと思います。」
こうしたひと言があるだけで、「会食がないのは失礼では?」という不安を、お互いに持たずに済みます。
一周忌全体の流れや案内状の書き方まで確認したい場合は、「一周忌の段取り|案内状の時期・返信期限・会食なし/返礼相場」も参考になると思います。
トラブル回避のチェックリスト
会食の準備で大切なのは、「完璧な段取り」よりも、「決めたことを早めに共有すること」です。
あとから、「聞いていない」「そんなつもりじゃなかった」とならないように、次の項目をメモにしておくと安心です。
・招待する人と、声をかけない人を家族内で確認したか
・最終的な出席人数を、いつまでに確定するか
・高齢の方や足の悪い方の移動手段(車・タクシー・送迎バスなど)はどうするか
・トイレに行きやすい席に座ってもらう人は誰か
・アレルギーや食べられないものがある人がいないか
・子ども用のイスやメニューが必要かどうか
・支払い方法(現金のみか、カード・QR決済が使えるか)
・キャンセル規定(何日前から料金が発生するか)
紙でもスマホのメモでも構いません。
一度書き出しておくと、準備の抜け漏れをチェックしやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 会食をしないのは、やはり失礼でしょうか?
A. 事情があって会食を省略することは、今では珍しくありません。御膳料やお菓子などを添えて気持ちを表せば、マナー違反になることはほとんどありません。「今回はこういう事情で会食をしません」と、事前に一言伝えておくことが何よりの配慮になります。
Q. 仕出しとお店、どちらが一般的ですか?
A. 地域や家族構成によって違いますが、都市部では「お店の個室」を利用するご家庭もだいぶ増えています。一方で、高齢の方が多い場合や、お寺や会館にちょうど良い部屋がある場合は、移動が少ない仕出しのほうがラクなことも多いです。「誰が一番動きづらいか」で選んであげると決めやすくなります。
Q. 献杯の挨拶は、誰がするのがよいですか?
A. 喪主が行うことが多いですが、喪主が人前で話すのが苦手な場合や、高齢で負担が大きい場合は、故人に近い立場の親族(長男・長女・兄弟姉妹など)が代わりに挨拶しても問題ありません。大切なのは、事前に「誰が話すか」を決めておき、その人が安心して当日を迎えられるようにすることです。
まとめ
法事の会食に「これが正解です」という形はありません。
大切なのは、故人を思う気持ちと、集まってくれた人への「ありがとう」が、無理のない形で伝わることです。
・移動や階段がつらくないか
・トイレに行きやすいか
・子どもや高齢の方が、がまんしすぎずにいられるか
こうした現実的なところを一つひとつ軽くしていくと、自然とその家らしい会食の形が見えてきます。
会食は、どちらかというと「お疲れさま会」のような側面もあります。
形式を整えることよりも、「今日は来てくれてありがとう」「◯◯らしい一日だったね」と思える時間になれば、それが何よりの供養になります。
この記事が、あなたのご家庭にとってちょうどいい会食の形を選ぶヒントになればうれしいです。


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