「できるだけシンプルに、静かに見送りたい」
「親の希望で、葬儀はしないつもりだけれど…」
「葬儀って、本当に必要なんだろうか?」
終活や看取りを考える中で、「お葬式をしない」という選択を検討する方が増えています。ですが、その選択にはメリットもあれば、思わぬ落とし穴もあります。
この記事では、現役の葬祭スタッフとして多くのご家族を見送ってきた立場から、「葬儀をしない」という選択肢について、実際の事例や制度面もふまえて、やさしく丁寧に解説していきます。
「お葬式をしない」=どんな形になるの?
現実的に可能なのは「直葬(火葬式)」
「お葬式をしない」といっても、火葬は法律で義務づけられています。
そのため、儀式や会葬者を伴わない「直葬(火葬式)」が、現実的に選べる最低限の選択肢です。
直葬とは、式や参列者を伴わず、ごく少人数で火葬のみを行うスタイル。費用は最も抑えられ、流れもシンプルです。
火葬すらしないとどうなる?
ごくまれに「何もしたくない」「火葬費も払えない」というケースもあります。
その場合、遺体は行政に引き渡され、「引き取り拒否」という形になります。
この場合、市町村が税金で火葬を行い、納骨先は合葬墓などになります。
ただし、これは「お葬式をしない」という選択ではなく、“遺体の所有権を放棄する”行為です。精神的にも社会的にも大きなハードルがあります。
土葬や海葬は選べる?
土葬は制度上「不可能ではない」が、実際には…
法律上、日本では土葬は禁止されていません。
ただし、対応している墓地が極めて少なく、許可も難しいのが現実です。
2022年の土葬割合は全国で約0.03%。
特定の宗教や慣習を持つ一部地域でのみ行われています。
海葬や風葬、水火葬はどう?
海葬(水葬)は一部で可能ですが、基本的に火葬を経た後の遺骨の散骨として行われます。
風葬や鳥葬、水火葬などは日本では制度的に許可されておらず、現実的な選択肢とは言えません。
「葬儀をしない」ことへの後悔
火葬だけで見送った方から、次のような声を聞くことがあります。
- 「急ぎ足で終わってしまって、気持ちの整理ができなかった」
- 「親戚にちゃんと説明しきれなかった」
- 「形だけでもお経をあげてもらえばよかったかも…」
確かに「簡素に済ませたい」「金銭的に厳しい」といったご事情はあると思います。
ただ、「お葬式をしない」ことで、自分自身やご遺族の“心の区切り”が難しくなるケースもあるのです。
そもそも「お葬式」って、なに?
「葬儀」と「告別式」は、本来は別物です。
- 葬儀=仏式の宗教儀礼(読経・焼香など)
- 告別式=宗教色のない“お別れの場”
このふたつを合わせたものが、私たちが普段「お葬式」と呼んでいるものです。
したがって、「お葬式をしない」というのは、宗教儀礼もお別れの場も持たず、火葬だけを行う=直葬を意味します。
実際には火葬プランを選んでもお花を手向ける告別の時間を設けるケースが多いです。
直葬でも、できることはある
「式はしない。でも、なにかできることはないだろうか?」
そんなときは、たとえばこんな工夫ができます。
- お棺の中に、手紙や思い出の品を入れる
- 出棺前に、数分だけ家族だけで故人と向き合う時間をつくる
- 火葬後に、自宅で小さな偲ぶ会を開く
- エンディングノートで気持ちを共有しておく
形式を持たない見送りでも、心を込めて行うことで“心の区切り”が生まれます。
正解はない。でも、考えておくことが大切
「葬儀をするべきか、しないべきか」に、正解はありません。
大切なのは、後悔しないために「自分たちの考え」を整理しておくことです。
もし迷っているなら、まずはエンディングノートに自分の希望を書いてみる。
そして家族や信頼できる人と、少しずつ話してみる。
それだけでも、ずいぶん安心感は変わってきます。
さいごに:あなたの「想いの形」を残すために
「ホッとする終活ブログ」では、そんな“葬儀をしない”という選択にも寄り添い、
あなたらしい見送りの形を考えるお手伝いをしています。
気になることがあれば、どんなことでもご相談ください。
関連リンク
後悔しない葬儀選び|直葬と家族葬の違いを現役スタッフが解説します
→ 「火葬のみの直葬については、こちらの記事でも詳しく解説しています。」
【現役葬儀社スタッフが本音で解説】家族葬とは?メリット・デメリットをわかりやすく紹介
→ 「小規模でも気持ちの整理になる家族葬についてはこちら。」
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