「お葬式は、必ずしないといけないの?」
「通夜や告別式をせず、火葬だけでも大丈夫?」
「本人から“葬式はいらない”と言われているけれど、本当に何もしなくていい?」
費用や家族の負担を考え、このように迷う方は少なくありません。
結論からいうと、通夜や告別式を行わず、火葬だけで見送ることは可能です。
通夜、告別式、読経などの宗教儀礼を必ず行わなければならない法律はありません。
ただし、お葬式をしなくても、亡くなったあとの対応までなくなるわけではありません。
省けるのは主に儀式です。
病院や施設からの搬送、火葬までの安置、死亡届、火葬許可、火葬、遺骨への対応は残ります。
私は一級葬祭ディレクターとして葬儀の現場を経験し、現在も電話対応、事前相談、火葬予約、安置室の管理などに関わっています。
現場では、「何もしなくていい」という言葉だけでは、見送りの内容を決められません。
- 通夜や告別式をしないのか
- 宗教儀礼をしないのか
- 家族は故人と面会したいのか
- 火葬前に花を入れたいのか
- 家族も火葬へ立ち会わないのか
同じ「何もしない」でも、家族が思い浮かべている形はそれぞれ違うからです。
この記事では、お葬式をしない場合に最低限必要なことと、火葬だけで見送るときの注意点を整理します。
この記事でわかること
- お葬式をしなくても法律上問題はないのか
- 省けることと、必要なまま残ること
- 亡くなった直後に最初に決めること
- 火葬だけで見送る場合の大まかな流れ
- 式をしなくても発生する費用
- 親族や菩提寺との行き違いを防ぐ方法
- 本人から「葬式はいらない」と言われた場合の考え方
- 費用を用意できない場合や、引き取り手がいない場合の相談先
3行まとめ
- 通夜・葬儀・告別式を行わないこと自体に、法律上の問題はありません。
- ただし、搬送・安置・死亡届・火葬許可・火葬などの対応は必要です。
- 「何をしないか」だけでなく、「誰が会い、何を残すか」まで決めると行き違いを防げます。

「お葬式をしない」とは、何をしないこと?
「お葬式をしない」という言葉に、全国共通の決まった形があるわけではありません。
一般的には、通夜や告別式を行わず、火葬を中心に見送る方法を指します。
葬儀社では、次のような名称が使われています。
- 直葬
- 火葬式
- 火葬プラン
- 式を行わない見送り
ただし、名称が同じでも内容まで同じとは限りません。
火葬前に会館でお別れできるプランもあれば、安置中の面会ができず、火葬場で短時間だけ顔を見るプランもあります。
花を棺へ入れられることもあれば、施設の都合で難しいこともあります。
大切なのは、「直葬という名前かどうか」ではありません。
確認したいのは、実際にどこで安置され、家族がいつ会えて、火葬前に何ができるのかです。
直葬の詳しい流れ、費用、家族葬との違いについては、次の記事で解説しています。
省けることと、必要なまま残ること
お葬式をしない場合でも、すべてがゼロになるわけではありません。
整理すると、次のようになります。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 省くことができるもの | 通夜、告別式、祭壇、宗教儀礼、式場での式典、会食、会葬御礼品 |
| 法律・行政上必要なもの | 死亡届、埋火葬許可、原則24時間経過後の火葬、火葬場での火葬 |
| 実務上通常必要になるもの | 搬送、安置、保冷処置、棺、火葬場の予約、火葬場への搬送、遺骨への対応 |
香典を受け取った場合は、通夜や告別式を行わなくても、香典返しが必要になることがあります。
また、菩提寺や納骨予定のお墓がある場合は、宗教儀礼を家族だけの判断で省くと、その後の納骨や法要で話が複雑になることがあります。
「式なし」は儀式を引き算する言葉です。
火葬まで故人をお預かりする時間や、家族が担う責任までなくす言葉ではありません。
お葬式をしなくても法律上問題はない
通夜、葬儀、告別式を行わないこと自体は違法ではありません。
一方で、亡くなったあとには必要な手続きがあります。
主な決まりは次のとおりです。
- 死亡届を提出する
- 市区町村長から埋火葬許可を受ける
- 原則として死亡後24時間を経過してから火葬する
- 火葬場以外の場所で火葬しない
死亡届は、届出人が死亡の事実を知った日を含めて、原則7日以内に提出します。
死亡届が受理されると、埋火葬許可証が発行されます。
参考:大阪市|死亡届
また、墓地、埋葬等に関する法律では、原則として死亡後24時間を経過しなければ埋葬・火葬できないことや、火葬には市町村長の許可が必要なことが定められています。
自宅で故人を安置すること自体に問題があるわけではありません。
ただし、必要な処置や手続きをせず、自宅に置き続けることはできません。
火葬まで日数がかかる場合は、故人の状態を保つための処置と、適切な安置環境が必要です。
今、亡くなった直後なら先に決める3つ
病院や施設で亡くなった直後に、葬儀のすべてを決める必要はありません。
まず確認したいのは次の3つです。
1.どこへ搬送するか
主な搬送先は、自宅、葬儀会館、葬儀社の安置施設です。
火葬日が決まっていなくても、搬送先は先に決める必要があります。
2.安置中に面会できるか
安置施設によっては、面会時間が決まっていたり、家族が自由に出入りできなかったりします。
料金を抑えたプランでは、安置中の面会ができない場合もあります。
最後に会いたい人がいるなら、搬送前に確認してください。
3.火葬までの総額はいくらか
広告の基本料金だけではなく、次の費用まで含めて確認します。
- 搬送料
- 安置料
- 保冷処置
- 棺や骨壺
- 火葬料
- 火葬場までの搬送
- 面会やお別れの追加料金
亡くなった直後の動き方を状況別に確認したい方は、次の記事をご覧ください。
火葬だけで見送る場合の大まかな流れ
詳しい流れは直葬の記事へ譲り、ここでは最低限の道順だけを整理します。
死亡診断書または死体検案書を受け取る
病院などで亡くなった場合は、医師から死亡診断書を受け取ります。
警察による確認や検視が行われた場合などは、医師が死体検案書を作成することがあります。
死亡診断書または死体検案書は、死亡届と一体になった用紙です。
役所へ提出すると原本は戻らないため、必要に応じて提出前にコピーを取っておくと安心です。
故人を搬送し、火葬まで安置する
病院や施設から、自宅や安置施設などへ搬送します。
死亡後24時間は原則として火葬できません。
さらに、火葬場の空き状況によっては数日待つことがあります。
その間の安置場所と、故人の状態を保つための処置が必要です。
死亡届・火葬許可・火葬予約を進める
届出人が死亡届を記入し、役所へ提出します。
実務では、葬儀社が死亡届を預かり、届出人の使者として役所へ持参するケースが多くあります。
ただし、役所手続きや火葬場予約の対応範囲は、葬儀社や地域によって異なります。
「誰が役所へ行くのか」「誰が火葬場を予約するのか」は打ち合わせで確認してください。
死亡届の書き方については、次の記事で詳しく解説しています。
火葬前のお別れ・火葬・収骨を行う
火葬前に顔を見るのか、花を入れるのか、読経をお願いするのかを確認します。
その後、火葬と収骨を行います。
収骨の方法や遺骨の受け渡しは、地域や火葬場によって異なります。
納骨先が決まっていなくても、すぐに納骨する必要はありません。
自宅で保管しながら、家族で今後の供養を考えることもできます。
何もしないつもりでも葬儀社への連絡は必要?
法律上、必ず葬儀社へ依頼しなければならないわけではありません。
ただし、家族だけで搬送、安置、保冷、棺の準備、火葬場の予約、火葬場までの搬送を行うのは簡単ではありません。
そのため、実際には葬儀社へ依頼するケースがほとんどです。
葬儀社へ電話するときは、次のように伝えると希望が伝わりやすくなります。
通夜や告別式は行わず、火葬だけで見送りたいと考えています。安置場所、面会の可否、火葬前にできるお別れ、火葬を終えるまでの総額を教えてください。
「一番安いプランはいくらですか」だけでは、必要な条件が確認できません。
契約前に、少なくとも次の点を聞いてください。
- 故人はどこに安置されるか
- 安置中に面会できるか
- 安置料と保冷処置は何日分含まれるか
- 搬送距離による追加料金はあるか
- 火葬料は含まれているか
- 火葬前に顔を見たり、花を入れたりできるか
- 火葬場へ家族が行かない場合、遺骨を誰が受け取るのか
- 追加料金を含めた総額はいくらか
現場では、プラン名よりもこの確認のほうが重要です。
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「式をしない」場合も、安置とお別れの形は選べます
よりそうのお葬式では、通夜・告別式を行わない火葬式について、次のような形を比較できます。
- 面会を行わない預かり安置
- 安置中に家族が面会できるプラン
- 火葬まで自宅で一緒に過ごすプラン
安さだけで決めず、どこに安置されるか、いつ会えるか、火葬までの総額はいくらかを確認しておくと安心です。
※火葬料、安置日数、搬送距離などにより総額は変わります。申し込み前に、面会の希望と追加費用を含めた見積もりをご確認ください。
お葬式をしなくても費用はゼロにならない
通夜や告別式を省けば、式場、祭壇、料理、返礼品などの費用は抑えやすくなります。
ただし、次の費用は残ります。
- 病院や施設からの搬送
- 火葬までの安置
- 保冷処置
- 棺や骨壺
- 火葬料
- 火葬場までの搬送
- 葬儀社スタッフの対応
- 必要に応じた面会やお別れ
火葬料金は自治体や火葬場によって異なり、公営火葬場では住民料金と住民以外の料金に差がある場合もあります。
また、火葬までの日数が延びれば、安置料や保冷処置の費用が増えることがあります。
そのため、全国平均の金額だけで判断するよりも、実際に利用する地域と条件をそろえて見積もりを取るほうが確実です。
直葬の費用や追加料金については、次の記事で詳しく整理しています。
「本当に何もしない」と起こりやすい3つの問題
火葬までの安置場所が決まらない
「式をしないなら、すぐ火葬場へ行ける」と思われることがあります。
しかし、死亡後24時間の決まりに加え、火葬場の予約待ちが発生することもあります。
その間、故人をどこに安置するかは必ず考えなければなりません。
現場で最初に詰まりやすいのは、式の内容よりも搬送先です。
できると思っていたお別れができない
「火葬場でゆっくり顔を見られるだろう」
「その場で花を入れればいい」
そう考えていても、火葬場や葬儀社の運用によっては、十分な時間や場所が取れないことがあります。
大切なのは、お別れの時間を何分にするかではありません。
家族が「できると思っていたこと」を、本当にできるかです。
火葬後に親族・菩提寺・遺骨の問題が残る
火葬が終われば、すべてが終わるわけではありません。
あとから親族に、
「なぜ知らせてくれなかったのか」
「最後に会いたかった」
と言われることがあります。
菩提寺へ連絡しないまま火葬し、その後の納骨や法要で相談が難しくなる場合もあります。
さらに、遺骨をどこで保管し、いつ、どこへ納骨するのかも考える必要があります。
直葬で起こりやすい後悔については、次の記事へ役割を渡します。
大きな式をしなくても、お別れは残せる
お葬式をしないからといって、何もお別れをしてはいけないわけではありません。
たとえば、次のような形があります。
- 安置中に家族で面会する
- 花を数本だけ棺へ入れる
- 写真や手紙を添える
- 出棺前に家族で声をかける
- 宗教者へ短い読経を相談する
- 火葬後、自宅で写真を囲む
- 後日、親族だけで手を合わせる
施設によって、棺へ入れられる物、音楽の使用、読経できる場所、お別れに使える時間は異なります。
希望がある場合は、事前に葬儀社へ確認してください。
大きな式をしないことと、何の区切りも持たないことは同じではありません。
一方で、無理に「何かしなければ」と考える必要もありません。
家族が納得して静かに見送れるのであれば、それも一つの形です。
親族・菩提寺へ確認したいこと
親族へは「呼ぶか」より先に「伝えるか」を考える
すべての親族を火葬へ呼ぶ必要はありません。
ただし、故人と関係が深かった人には、事前に知らせたほうが行き違いを防ぎやすくなります。
伝える内容は、次の3点です。
- 通夜や告別式を行わないこと
- 火葬を家族だけで行うこと
- 面会や弔問ができるかどうか
たとえば、次のように伝えられます。
故人の希望と家族の事情を考え、通夜や告別式は行わず、家族だけで火葬することにしました。急なご連絡になり申し訳ありません。面会については確認のうえ、改めてお伝えします。
全員に賛成してもらうのは難しい場合もあります。
それでも、「知らないうちに火葬が終わっていた」という状態を避けるだけで、その後の関係は変わります。
菩提寺がある場合は火葬前に相談する
付き合いのある寺院や、納骨予定の寺院墓地がある場合は、火葬前に相談してください。
確認したいのは次の点です。
- 火葬だけの形でも納骨できるか
- 読経をどの段階でお願いするか
- 戒名・法名をどうするか
- 納骨や法要をどう進めるか
通夜や告別式を省くことと、菩提寺との関係をなくすことは別の話です。
火葬後に遺骨を持って相談へ行くより、先に一本電話を入れたほうが穏やかに進みます。
本人から「葬式はいらない」と言われている場合
本人から、
「葬式なんてしなくていい」
「お金をかけなくていい」
と言われている家族もいるでしょう。
ただ、この言葉が何を意味するのかは、人によって違います。
- 家族に費用を負担させたくない
- 大勢の人を呼びたくない
- 宗教儀礼を望んでいない
- 形式ばった式は必要ない
- 本当に火葬だけでよい
「大げさにしなくていい」は、見送り方の設計図ではありません。
元気なうちに話せるなら、次の点まで確認しておくと家族が迷いにくくなります。
- 通夜や告別式は行わないのか
- 家族だけのお別れはしてよいか
- 会ってほしい人はいるか
- 菩提寺や宗教者への連絡は必要か
- 遺骨をどこへ納めたいか
すでに本人へ確認できない場合は、言葉を文字どおりに実行することだけにこだわらず、本人が避けたかった負担と、残された家族が必要とするお別れの両方を考えます。
本人の希望を尊重することと、家族の気持ちを無視することも同じではありません。
費用を用意できない・引き取り手がいない場合
費用を用意できない場合
生活に困窮している場合は、生活保護制度の葬祭扶助を利用できる可能性があります。
葬祭扶助の対象には、遺体の運搬、火葬または埋葬、納骨などが含まれます。
ただし、故人が生活保護を受けていたという理由だけで、自動的に利用できるわけではありません。
葬祭を行う人、故人の遺留金品、扶養義務者の有無などによって判断されます。
重要なのは、葬儀社と契約する前に相談することです。
自治体の福祉窓口や担当ケースワーカーへ、できるだけ早く連絡してください。
詳しい制度については、次の記事で解説しています。
火葬を行う人がいない場合
遺体の引き取りや火葬を行う人がいない、または誰が行うのか判明しない場合は、死亡地の市町村長が埋葬または火葬を行う仕組みがあります。
これは、墓地、埋葬等に関する法律第9条に定められています。
ただし、家族が内容を自由に選べる葬儀制度ではありません。
身寄りがない、引き取りが難しい、費用面で手続きを進められないといった場合は、放置せず、死亡地の自治体や病院・施設の相談員へ連絡してください。
よくある質問
葬儀をしないと違法になりますか?
通夜、葬儀、告別式を行わないこと自体は違法ではありません。
ただし、死亡届、埋火葬許可、死亡後24時間の規定などは守る必要があります。
病院から直接、火葬場へ行けますか?
亡くなった直後に、そのまま火葬することは原則できません。
死亡後24時間は原則として火葬できず、火葬場の予約待ちが発生することもあるため、通常は自宅や安置施設などで安置します。
直葬でも顔を見たり、花を入れたりできますか?
できる場合もありますが、葬儀社のプラン、安置施設、火葬場によって異なります。
面会の可否、火葬前のお別れ場所、花入れができるかを契約前に確認してください。
家族が火葬に立ち会わないこともできますか?
葬儀社や火葬場の運用によっては可能です。
ただし、契約や手続きを誰が行うのか、遺骨を誰が受け取るのかを決める必要があります。
家族が誰も対応できない場合は、葬儀社だけで決めず、自治体にも相談してください。
遺骨はすぐに納骨しなければいけませんか?
すぐに納骨する必要はありません。
自宅で保管しながら、納骨、お墓、永代供養、手元供養などを考えることもできます。
ただし、菩提寺や使用予定の墓地がある場合は、納骨方法や時期を確認してください。
お葬式をしないと、あとから弔問客が増えますか?
故人の友人や親族へ知らせないまま火葬した場合、あとから自宅への弔問が続くことがあります。
弔問や香典を辞退する場合は、火葬後の報告文にも明記すると伝わりやすくなります。
「葬儀はしない」と伝えるのは失礼ですか?
葬儀をしないこと自体が失礼なのではありません。
ただし、関係が深かった人へ何も伝えず、「最後に会いたかった」という気持ちを置き去りにすると、行き違いが起こりやすくなります。
見送り方とあわせて、誰へ、いつ伝えるかも考えておきましょう。
まとめ|儀式は省けても、亡くなったあとの対応は残る
通夜や告別式を行わず、火葬だけで見送ることは可能です。
ただし、お葬式をしなくても、次の対応は残ります。
- 病院や施設からの搬送
- 火葬までの安置
- 死亡届と埋火葬許可
- 火葬場の予約
- 火葬と遺骨への対応
- 親族や菩提寺への連絡
- 火葬後の供養や納骨の検討
お葬式を大きくするか、何も行わないかの二択ではありません。
通夜や告別式はしなくても、家族が顔を見たり、花を手向けたり、親しかった人へ連絡したりすることはできます。
大切なのは、「何もしない」と一括りにしないことです。
何を省くのか。
誰がお別れをするのか。
火葬前に何を残したいのか。
火葬後を誰が引き受けるのか。
ここまで具体的にして初めて、「お葬式をしない」という選択が現実の見送り方になります。
葬儀を行う意味から考え直したい方は、次の記事も参考にしてください。


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