お墓、なくても大丈夫⁈私が迷いながら考える、新しい供養のかたち

この記事は、現役葬祭ディレクターである筆者の個人的な悩みと気づきを綴った小さなエッセイです。手順書ではありませんが、文中の「小さな知恵箱」に分骨の基本だけ短くまとめました。迷いながら一緒に考えていけたら嬉しいです。

この記事でわかること

  • 遠方の実家墓と、いまの生活拠点のあいだで揺れる“距離の問題”の正体
  • 「分骨」という折衷案が、心の距離を縮めるかもしれないという視点
  • 正解探しより、家族と少しずつ話すプロセスが供養そのものになること
  • 答えはすぐ決めなくていい。迷い続けても前進している、というメッセージ

3行まとめ

  • 供養は“形式の正解”より、いまの家族に合う納得感がいちばん。
  • 遠いお墓と近い暮らしのあいだに、分骨や手元供養という中間解がある。
  • 結論は急がない。対話しながら少しずつ形を選べばいい。

「お墓がある」ことが当たり前だった私

私は埼玉県出身です。

母方の祖父が建ててくれたお墓が新座市にあり、幼いころから夏休みになると、お盆のお墓参りは毎年のようにしてきました。母と一緒に線香をあげ、手を合わせ、蝉の声とともに立ちのぼる煙。その情景は、いまでもはっきり思い出せます。私にとって「お墓参り」は、家族と一緒に行う大切な夏の行事であり、帰省の象徴でもありました。

そんな私が、今、悩んでいます。「自分は、どこに入るんだろう」と。


家族ができて、距離ができた

大阪に就職し、妻と出会い、息子が生まれました。 今は大阪に家を買い、もう埼玉に戻る予定はありません。仕事も家庭も、大阪を中心に回っています。

一方で、埼玉の新座霊園にあるお墓は、今も変わらずそこにあります。 私の両親がそのお墓に入ることは、きっともう決まっている。でも、私は?

私の息子は、どこに向かって手を合わせてくれるんだろう。

埼玉と大阪。距離は遠く、気持ちも少しずつ離れていくような気がして、心のどこかがギュッと締めつけられるような感覚があります。


「分骨」という選択肢

私は葬祭ディレクターとして、たくさんの人を見送ってきました。 そのなかで、「分骨」という選択をするご家族にも、たくさん出会ってきました。

・一部は実家のお墓に納める ・一部は自宅で手元供養をする

そうすることで、「離れて暮らしていても、気持ちは近くにある」と感じる人も多いのです。

実際、私は今、父や母が亡くなったときは「分骨してもらおうかな」と思っています。 埼玉のお墓に納めつつ、大阪の自宅でも、小さな骨壺やメモリアルグッズなどで、手元に遺骨の一部を残せたらいいなと。

※分骨=遺骨を二か所以上に分けて納めること。


小さな知恵箱:分骨って、まず何を知っておけばいい?

  • 意味:遺骨を複数に分けて供養すること
  • タイミング:火葬直後/納骨時/改葬時
  • 書類:受け入れ先が要望→分骨証明書(火葬場 or 墓地管理者)
  • よくある補助:粉骨(手元供養・散骨で扱いやすい)
  • 相性が良い先:手元供養/納骨堂/永代供養/散骨
    → くわしい手順は【お墓を買わないという選択肢】へ

家族と語りながら進めていく

お墓や供養の話って、なんとなく重くて話しづらいですよね。 でも、私は妻とも、少しずつこの話をするようになりました。 「うちは、どうしようか」「どこに入ろうか」「かい君の世代は、どうなるかな」

正解なんて、ありません。 でも、こうやって話していると、なんだか「供養」って、亡くなった人のためというよりも、生きている私たちのためのものなんだな、と思えてきます。


「どこで手を合わせたい?」(場所の話)

「誰が通いやすい?」(現実の足の話)

「10年後も続けられる?」(維持の話)

私はまだ、迷っています

私は、葬祭ディレクターとしてたくさんの人の最期を見送ってきました。 その経験から、「自分にとっての終活」も、きっと誰かの『正解』の形とは違うものになるのだろうと、心の底からそう感じています。

遠くのお墓も大切です。 でも、身近にある想い出や、今の家族と一緒に過ごす日々も、同じくらい大切。

私はまだ迷っています。 でも、迷いながらでも、家族と話し合いながら、自分なりの供養の形を考えていけたら。 それがきっと、私にとっての終活なんだと思います。


まとめ:供養とは、生きる私たちのためのもの

供養は「こうしなければいけない」というものではありません。 大切なのは、気持ちがこもっているかどうか。

遠いお墓でも、身近なミニ骨壺でも、それが「想いのこもった場所」であるなら、十分に供養としての意味を持つのだと思います。

どうか、「正解」を探すのではなく、自分や家族にとっての「納得のいく形」を見つけてください。


アクションの提案

まずは、家族と話してみましょう

お茶を飲みながら、「うちって、お墓どうする?」と気軽に聞いてみるだけでも、立派な第一歩です。

もし、まだ話しづらいなら…

エンディングノートに、自分の考えを書いてみましょう。

書くことで気持ちが整理され、家族もその想いを受け取りやすくなります。


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