お香典のキャッシュレス化の動きがあることはご存知ですか?私が以前参加した【エンディング産業展】ではこういった取り組みがみられました。現状では対応している葬儀社はまだ少ないと思われますが、状況と伝え方次第でキャッシュレスなお香典が増えていく可能性はあり。香典辞退は増えていますが、受けるとしたらこういった取り組みも増えていくでしょう。キャッシュレスになれば香典袋や手書きの準備する手間は省けます。いちばん大切なのは「喪家の方針」と「参列者が迷わない案内」。一方で地域慣習が強い・寺院側運用が固定的な場合は、これまで通り現金運用を基軸にしましょう。現金での受付は従来どおり必ず用意して、安心感を明示する必要はあります。
「マナー」は時代と共に上書きされるものですよね。判断軸は①喪家の意向 ②地域慣習 ③会場/寺院の運用 。
キャッシュレス香典、あなたの葬儀で使える?傾向ごとに分類
OKになりやすい
- 年齢層が若い
- 家族中心
- 遠方・オンライン参列が多い
- 「現金取扱いを減らしたい」方針が明確
- お別れの会・ 偲ぶ会
- 受付人員・端末・QR掲示が十分
慎重/避けたい
- 高齢層が大半の参列(まぁこうなりがち)
- 地域慣習が強く現金香典が当然
- 寺院/会場のルールが固定
- 受付人員や導線が不足(混乱リスク)
最終決定は「喪家の方針+地域慣習+会場/寺院運用」を優先。迷う場合は現金基軸に最小限でキャッシュレス併用。
案内方法:迷わせない“伝え方”テンプレ
訃報/参列案内に追記(家族葬)
このたび家族葬にて執り行う運びとなりました。ご香典につきましては、当日受付での現金/下記キャッシュレスのいずれでも差し支えございません。ご無理のない方法をお選びください。
[会場QR:○○Pay/銀行振込(口座名義:□□家)]
受付掲示(会場QR)
ご香典は現金/キャッシュレスいずれでも承ります。
・現金:芳名カードへご記入のうえ受付へ
・キャッシュレス:こちらのQRより送金後、スタッフにお名前をお知らせください(スマホ画面の提示にご協力ください)
※手数料は送金側のご負担となる場合があります
参列できない方向け(弔慰金+お悔やみ案内)
遠方よりお気持ちを賜りありがとうございます。ご香典(弔慰金)は無理のない範囲で、お悔やみの言葉だけでも十分にお気持ちは伝わります。ご送金をご希望の場合は、下記いずれかをご利用ください。確認でき次第、受領のご連絡を差し上げます。
[○○Pay/銀行振込]
香典辞退の言い回し(キャッシュレス併記なし)
誠に勝手ながら、御香典は固く辞退申し上げます。その分どうか故人を静かに偲んでいただければ幸いです。
QR/現金/手数料/受領連絡/画面提示などを明記すると摩擦が減ります。「現金orキャッシュレスどちらでもOK」の可視化が鍵。香典返しが面倒で香典辞退とするケースが多いです。
受付の実務:QR運用とお金の流れ

当日の設営(QR印刷・台・導線)
- QRコードは2種以上用意(主要Pay+銀行振込)
- ラミネート+卓上スタンドで目線の高さに掲示
- 現金とQRの導線を分離(並び直しを防止)
- 「送金→氏名申告→画面提示→チェック」の小さな流れ図を掲示
集計・名簿化(突合ルール)
- 「芳名カード名」「読上げ名」「入金名義」をチェックマークで突合
- 入金名義が不明/別名義(家族名義等)の場合は、氏名・続柄・住所/電話で確認
- 不一致はメモ欄に「要確認」マーク
- 締め時間を設定(開式15分前/閉式後)
香典返し(即日/後返し/辞退)
- 運用を一本化しましょう
- 即日返しの場合:受付で数を管理(最近は少ない)
- 後返しの場合:台帳に品名・発送予定日・住所情報を明記(こちらが多い)
会計・アーカイブ(個人情報配慮)
- 家計アプリ連携は個人情報(氏名・金額)が特定できない形で記録(必要なら黒塗り・モザイク)
- 寺院・会場の領収処理方針に従う(代表者名で集約)
- 台帳は施行番号/逝去者名で管理
- 写真やSNS投稿は故人・ご遺族のプライバシーに十分注意
「速さ」より「識別しやすさ」。後日の返礼・お礼が迷子にならない運用を最優先に。
トラブル回避Q&A
Q. 現金派への配慮は?
A. 現金窓口を必ず残し、「どちらでも大丈夫」と受付掲示で明言。高齢の方へはスタッフが同行して記入補助。
Q. 送金主が誰かわからない
A. 案内文に「送金後は氏名を受付へ」と必ず記載。未突合は「要確認リスト」に残し、受領返信テンプレで確認。
Q. 手数料・返金は?
A. 手数料は原則送金側負担と事前明記。返金は振込のみ/手数料差引など方針を先に決め、掲示で透明化。
Q. 香典辞退なのに届いた
A. 地域慣習も考慮し、まずは喪家の意向を明確に。受領後に丁重に返金or同額を供養へ充当の方針を選び、テンプレで個別連絡。(感謝→方針→実務の順)
Q. 香典の用途は?どう説明?
A. 葬儀/法要費用・返礼品・供養費用に充当が一般的。「皆さまのお気持ちを大切に活用させていただきます」と一言。
よくある質問(PAA対応)
Q1. 香典をキャッシュレスで渡すのは失礼ですか?
A. 「喪家の方針」「地域慣習」「会場(寺院)運用」の3点が整えば失礼にはあたりません。案内や受付掲示で「現金/キャッシュレスどちらでも可」を明示し、迷いをなくす運用が鍵です。現金窓口は必ず残しましょう。
Q2. 金額の相場は、現金と変わりますか?
A. 相場は変わりません。関係性(親族・友人・職場など)に応じた従来の目安を踏襲します。香典返しの扱いも同様です(半返し基準など)。詳しくは関連記事「香典返しはいつ?相場表」を参照してください。→ 内部リンク:香典返しはいつ?四十九日までの正解と相場表
Q3. どの決済方法が無難ですか?
A. 主要QR決済+銀行振込の併用が無難です。QRは2種以上、案内掲示に「送金→氏名申告→画面提示→チェック」の流れを図示するとスムーズ。
Q4. 手数料はだれが負担しますか?
A. 原則、送金側負担とするケースが多いです。事前に明記してトラブルを避けましょう。返金が必要になった場合の扱い(振込のみ・手数料差引など)も先に決めて掲示します。
Q5. 受付ではどう案内すればいい?
A. 受付掲示に「現金/キャッシュレスいずれも可」「送金後はお名前を受付へ」「スマホ画面提示」の3点を大きく明記。高齢の方にはスタッフが記入補助に回ると安心です。
Q6. 参列できない人からの“オンライン香典”は?
A. 可能です。お悔やみの言葉だけでも十分と添えつつ、希望者向けに決済手段を案内します。受領連絡テンプレを用意しておくと、対応が均一化します。
Q7. 香典辞退との関係は?
A. 辞退する場合はキャッシュレスの併記は行いません。それでも届いた際の扱い(返金/供養充当)は事前に運用統一し、丁重に文面対応します。
Q8. 香典返しはどうすれば?
A. 従来どおりの運用でOKです。即日返し/後返し/辞退のいずれかに一本化して案内・台帳管理を行います。相場・時期の詳細は関連記事へ。→ 内部リンク:香典返しはいつ?四十九日までの正解と相場表
文例セット(コピペOK)
受領返信(個別メッセージ)
このたびは温かいお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。確かに受領いたしましたことをご報告申し上げます。落ち着きましたら改めてご挨拶させていただきます。
お悔やみの言葉のみへの返信
ご多用のところお悔やみのお言葉を賜り、誠にありがとうございます。お気持ちは十分に伝わっております。心より御礼申し上げます。
文例は「感謝→受領/方針→今後」の順に揃えると、誰が読んでも迷いません。
受付の実務チェックリスト
- QR(2種以上)印刷・ラミネート/台座用意
- 現金トレー/筆記具/芳名カード/メモ台
- 送金名=芳名の突合ルール(読み上げ・チェックマーク)
- 手数料/返金の扱い方針を事前決定
- 香典返し:即日/後返し/辞退の運用を一本化
- 当日責任者・締め時間・集計表フォーマット
- 受領返信テンプレ(LINE/メール)準備
依頼先の葬儀社がどこまで対応できるのか、確認しましょう。
まとめ:一番大切なのは“想いが届くこと”
このような”香典のキャッシュレス化”はいかがでしょうか。まだ一般的になっていないのが現実。初めは一長一短ですね。しかし、キャッシュレスは“手段”であって“目的”ではありません。故人を偲ぶ気持ちが届く設計になっているか──この視点に立ち返れば、答えはシンプルです。喪家の方針を言語化し、参列者が迷わない導線を整えましょう。
【関連記事】
さらに準備を進めたい方へ。下記の記事もあわせてどうぞ。
・喪主がやること全部リスト|失敗しない準備と心構え(香典対応や返礼の流れも俯瞰できる実務ガイド)
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