はじめに:親が元気なうちに考えておくこと
「親が亡くなったあと、何をどうすればいいのかわからない…」
そんな不安を感じたことはありませんか?
近年、「死後事務委任契約」という言葉が注目されるようになってきました。
これは、家族や親しい人が亡くなった後に発生する「事務的な手続き」や「片付けごと」を、信頼できる誰かにお願いしておくための仕組みです。
本記事では、葬祭ディレクターとして数多くの現場に立ち会ってきた筆者が、「死後事務委任とは何か?」をわかりやすく解説し、エンディングノートや終活との関係にも触れながら、「親が元気な今だからこそできる準備」についてお伝えします。
日々対応していても、たまに施主様がこの契約によって決まっていることがあります。
死後事務委任とは?
「死後事務委任契約」とは、本人の死後に発生するさまざまな手続きや作業を、事前に第三者へ依頼するための契約のことです。
たとえば、こんなことが対象になります:
- 葬儀や火葬の手配
- 役所への死亡届提出、年金の停止などの手続き
- 入院費や施設費用の支払い
- 携帯電話・クレジットカード・サブスクの解約
- 家の片付けや賃貸物件の退去手続き
- SNSやブログなどデジタル遺品の整理
- ペットの引き取り手配
これらは「遺言」ではカバーしきれない部分。
遺言は基本的に“財産の分け方”を指示するためのもので、生活インフラや事務処理まで網羅しているわけではないケースが多いようです。
なぜ必要?よくある「困った」ケース
「遺言はあるけど、葬儀のことが何も書かれていない」
「親の家を片付けたいのに、誰が契約者かも分からない」
「携帯の解約に必要な書類が手元にない」
これらは実際に現場でよく見聞きする悩みです。
本人が元気なうちは、「自分が死んだあとのことなんて…」と話題にしにくいかもしれませんが、実はそれが家族の負担を大きくする原因になることも。
死後事務委任契約は、そういった“死後の手続き”をきちんと引き継げるようにするための仕組みです。
誰にお願いできるの?家族じゃないとダメ?
実は、死後事務委任契約は【法的な効力がある契約】なので、お願いする相手は家族以外でも問題ありません。
例:
- 信頼できる親族
- 友人
- 専門家(司法書士、行政書士、NPO法人など)
※報酬が発生する場合は、きちんと金銭の支払い方法まで決めておくことが重要です。
エンディングノートとの違いと組み合わせ方
「死後事務委任契約」が法的に効力のある契約である一方、エンディングノートはあくまで“本人の希望”を伝えるメモのような存在です。
たとえば、
内容 | 死後事務委任 | エンディングノート |
---|---|---|
法的効力 | あり | なし |
用途 | 事務処理の依頼 | 希望や想いの記録 |
記載例 | スマホの解約、家の退去手続きなど | 好きな音楽、葬儀の希望、家族へのメッセージ |
両方を組み合わせることで、法的なサポートと心のサポート、両面から“死後の備え”を整えることができます。
どうやって契約するの?
死後事務委任契約は、書面でしっかりと結んでおく必要があります。
一般的な流れは以下の通り:
- 依頼したい内容を整理する
- 依頼する相手と合意を取る
- 契約書を作成(専門家に依頼することが多い)
- 契約書を保管し、家族にも伝えておく
費用の相場は3万〜10万円前後。
専門家に依頼すると安心ですが、信頼できる個人間で交わす場合もあります。
私の感覚ではほとんどが司法書士、行政書士などの専門家と契約されています。
まとめ:親が元気な今だから、ゆるく始めよう
死後の準備というと、つい深刻に考えてしまいがちですが、
本当に大切なのは「残される人が困らないようにすること」。
「死後事務委任契約」も、「いざという時、誰が何をしてくれるのか」をあらかじめ明確にしておくための、やさしい備えです。
✅ 今できる一歩
・「どんな手続きがあるか」を家族で話してみる
・エンディングノートに、自分の希望を書いてみる
・専門家に相談だけしてみる
そんな小さな一歩が、未来の安心につながります。
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