はじめに
「お墓をどうするかはまだ決めきれない。でも、なにか形としてそばに感じていたい。」
そんな思いから、ペンダントやミニ骨壺などの「手元供養」を検討される方が増えています。
一方で、ネットショップを開くと、数千円から数十万円まで、本当にいろいろな商品が並んでいて、
・何を基準に選べばいいのか分からない
・値段の差がどこから来るのか分からない
・「あとで後悔しないか」が一番こわい
と、手を止めてしまう方も少なくありません。
この記事では、現役の葬祭ディレクターとしての経験もふまえて、
・手元供養が向いているケース・向かないケース
・ペンダント・リングなど「身につけるタイプ」の選び方
・ミニ骨壺・ミニ仏壇など「置くタイプ」の選び方
・よくあるトラブルや家族との話し合いで気をつけたいこと
を整理していきます。
葬儀全体の流れについては、 葬儀の打ち合わせの流れと準備
で別にまとめていますので、そちらとあわせて読んでいただくと、全体像がつかみやすいと思います。
今すぐ決めなくても大丈夫です。
「こんな考え方で見ていけばいいんだな」と分かるだけでも、気持ちはだいぶラクになります。
そのための道しるべとして読んでいただけたらうれしいです。
この記事でわかること
・手元供養が向いている人・一度立ち止まって考えたい人の特徴
・ペンダントやリングなど「身につける手元供養」を選ぶときのポイントと相場
・ミニ骨壺やミニ仏壇など「置く手元供養」の選び方と相場・置き場所の考え方
・分骨・粉骨・家族との話し合いでよくあるつまずきポイント
・お墓・納骨堂・永代供養・散骨と「手元供養」をどう組み合わせるかの考え方
3行まとめ
・手元供養は「お墓の代わり」ではなく、「そばに感じていたい気持ち」を形にする一つの方法。
・ペンダントやミニ骨壺は、素材・サイズ・置き場所・紛失リスクを知ってから選ぶと失敗が少なくなる。
・迷ったときは「誰のための手元供養か」「何年くらい続けたいか」を言葉にしてみると、選び方の軸が見えてくる。
手元供養が向いているケース・向かないケース
まずは、「手元供養って自分たちに合うのかな?」というところから整理しておきましょう。
こんな方には、手元供養が向いていることが多いです。
・お墓をすぐには用意せず、しばらく自宅で落ち着きたい
・遠方のお墓や納骨堂とは別に、日常の中にも故人を感じられる場所が欲しい
・一人暮らし・お子さんがいないなどで「自宅の中に自分なりの供養の場」を作りたい
・「仏壇は大きすぎるけれど、まったく何もないのも寂しい」と感じている
反対に、次のような場合はいったん立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。
・親族の中に「遺骨はすべてお墓(納骨堂)に入れるべき」という考えが強い人がいる
・将来、遺骨の管理を引き継ぐ人がいないことがはっきりしている
・「遺骨を身につけていると落ち着かない」と感じているけれど、周りに合わせて検討している
手元供養は、「してはいけない」ものではありません。
ただ、故人のことを大切に思っているからこそ、
・自分の気持ち
・家族の考え方
・将来の管理
この3つのバランスを、少しだけ意識しておくと安心です。
お墓や永代供養・樹木葬・納骨堂など、遺骨の「長期の行き先」については、 お墓を買わないという選択肢──永代供養・樹木葬・納骨堂の違い
でまとめています。ここでは、手元に分骨しておく部分にしぼってお話ししていきます。
ここで答えを出せなくても大丈夫です。
「向き・不向きがあるんだな」と頭の片すみに置いて、先を読み進めてみてください。
手元供養の主な種類とざっくり相場
手元供養といっても、形はいろいろあります。代表的なものと、だいたいの価格帯を先にイメージしておきましょう。
・遺骨ペンダント(ネックレス)
…数千円〜3万円台がボリュームゾーン。貴金属やブランド品だと10万円以上のものもあります。
・遺骨リング(指輪)
…1万円台〜。フルオーダーや宝石入りのものは数十万円になることもあります。
・ミニ骨壺
…数千円〜2万円台が目安。作家ものやブランド品、天然石などはもっと高くなることもあります。
・ミニ仏壇・メモリアルステージ
…1万円台〜。仏具・フォトフレーム・花立てなどがセットになったものは3〜5万円前後が多いです。
高ければ良い、安いからダメということではありません。
「家計として無理のない範囲で」「自分たちが続けやすい形かどうか」を優先して考えてみてください。
金額だけ見ると迷ってしまいますが、
「普段どこまで身につけるか」「どこに置くか」「何年くらい使い続けたいか」で、適した価格帯も変わってきます。
ここから先は、「身につけるタイプ」と「置くタイプ」に分けて、もう少し具体的に見ていきます。
ペンダント・リングなど「身につける手元供養」の選び方
身につけるタイプは、「いつも一緒にいたい」という気持ちに寄り添ってくれる一方で、
紛失や変色などのリスクにも目を向ける必要があります。
どんな人に向いているか
・故人との距離がとても近く、しばらく「離れたくない」と感じている
・通勤やお出かけなど、日常の中でもさりげなく身につけていたい
・目立ちすぎないデザインがあれば安心できる
反対に、こう感じる方は、無理に身につけるタイプを選ばなくても大丈夫です。
・「落としたらどうしよう」と考えると不安が強くなる
・身体に身につけること自体に抵抗がある
・金属アレルギーや肌トラブルが心配
無理のない距離感で「そばにいる」と感じられるかどうかが、一つの目安です。
素材の違い(ステンレス・シルバー・チタンなど)
遺骨ペンダントの多くは、次のような素材で作られています。
・ステンレス
…比較的お手頃で、サビに強く、日常使いしやすい素材です。
金属アレルギーが出にくいタイプも増えています。
・シルバー
…白くやわらかい光沢があり、アクセサリーとしても人気の素材です。
ただし、汗や空気で変色しやすく、こまめなお手入れが必要になります。
・チタン
…軽くて丈夫で、サビにも強い素材です。
金属アレルギーのある方に向くと言われることも多いです。
・ゴールド・プラチナ
…高価にはなりますが、長く身につける前提なら、変色や強度の面でも安心感があります。
どれが「正解」というより、
・肌に合うか
・お手入れの手間をどこまでかけられそうか
をイメージして選ぶのがコツです。
金属アレルギーがある方は、チタンや一部のステンレスなど、アレルギー対応をうたっている商品を選ぶか、短時間から試してみると安心です。
デザインと中に入る量
遺骨ペンダントは、見た目には普通のアクセサリーとほとんど変わらないものも多く、
中に入れられる量は「ごく少量(耳かき一杯分程度)」というものがほとんどです。
・遺骨をパウダー状に粉骨して、少しだけ入れる
・火葬場でもらう「のど仏」のかけらを、さらに分けて納める
・髪の毛や爪など、遺骨以外を納める方法もある
など、入れ方にもいくつかパターンがあります。
「すべてを手元に残す」のではなく、「全体の中の一部を預かる」というイメージで考えると、お墓や納骨堂との組み合わせもしやすくなります。
分骨のタイミングや、どこまでをお墓に納めるかについては、 お墓を買わないという選択肢
の記事でも触れていますので、あわせて参考にしてみてください。
防水性・日常使いの注意点
商品によっては「生活防水」や「完全防水」をうたっているものもありますが、
中に入っているのは大切な遺骨です。できれば次のような点に気をつけておくと安心です。
・入浴やプール、温泉では基本的に外しておく
・汗をかきやすい季節はときどき外して、中を乾かしてあげる
・キャップ部分のネジがゆるんでいないか、時々確認する
「いつでもどこでも絶対身につけ続けなければ」と思う必要はありません。
外したいときは、そっと休ませてあげるつもりで、専用のケースやミニ仏壇の上に置いてあげても大丈夫です。
紛失リスクと備え方
身につけるタイプで一番多い不安が、「なくしてしまったらどうしよう」というものです。
完全にゼロにはできませんが、次のような工夫でリスクを減らすことができます。
・チェーンは細すぎないもの・切れにくいものを選ぶ
・金具の部分が弱そうなら、自分で交換するか、購入時に相談しておく
・念のため、遺骨の一部はペンダントに入れず、別の場所に保管しておく
それでも不安が強い場合は、「日によって身につける日・つけない日を分ける」「外出時はつけず、自宅でだけ身につける」など、
自分の心が落ち着く範囲に調整してもかまいません。
どんなデザインや素材があるのかは、実際に商品ページを眺めてみるとイメージしやすくなります。
いくつか候補を見比べながら、「自分の生活や服装になじみそうか」をゆっくり見てみてください。
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ミニ骨壺・ミニ仏壇など「置く手元供養」の選び方
「身につけるのは少し違う気がするけれど、家のどこかにそっと居場所を作ってあげたい」
そんな方には、ミニ骨壺やミニ仏壇が向いています。
どんな人に向いているか
・リビングや寝室など、家の一角に静かなスペースを作りたい
・家族みんなで手を合わせやすい場所が欲しい
・身につけるより「そっと見守ってもらう」イメージがしっくりくる
反対に、
・狭い賃貸で置き場所に困ってしまいそう
・来客時に視線が気になって落ち着かない
・将来の引っ越しが多そうで、荷物を増やしたくない
という場合は、ミニ骨壺だけにする、写真とお花だけにする、など、もっとシンプルな形でもかまいません。
写真やアルバム、手紙で故人をそばに感じる方法については、 思い出の写真・アルバム・手紙のしまい方
で詳しくまとめています。
サイズと入る量の目安
ミニ骨壺は、見た目は小さくても、入れられる量には差があります。
・ふた部分までしっかり入るタイプ
・中に小さなカプセルが入っていて、その中にだけ納めるタイプ
・そもそも「象徴としてのごく少量」だけを想定しているタイプ
などです。
商品ページに「どのくらい入るか」が書かれていることも多いので、
・分骨した遺骨の一部を納めるのか
・粉骨してパウダー状にしたものをほんの少量納めるのか
イメージしながら選んでみてください。
悩む場合は、「多くても少なくても入れすぎない(ぎゅうぎゅうにしない)」くらいが、扱いやすくて安心です。
素材ごとの特徴(陶器・ガラス・金属・木など)
ミニ骨壺の素材には、それぞれこんな特徴があります。
・陶器
…やわらかい雰囲気で、仏具らしさもあります。
割れやすいので、小さなお子さんやペットがいるご家庭では置き場所に注意が必要です。
・ガラス
…光を通して、明るい印象になります。
こちらも落下には弱いので、安定した場所に置くことが大切です。
・金属(真鍮など)
…重量感があり、安定して置けます。
デザインによっては洋室にもなじみやすいです。
・木製
…あたたかく、家具とのなじみもよい素材です。
湿気や日の当たり方によって、色味が少しずつ変わっていくこともあります。
どの素材も、「合う・合わない」は好みと生活スタイル次第です。
使っている家具や、お部屋の雰囲気に近いものを選ぶと、「置いても浮かない」のでおすすめです。
置き場所とお手入れ・湿気対策
ミニ骨壺やミニ仏壇の置き場所としては、
・リビングの一角
・寝室のチェストの上
・仏間があれば仏壇のそば
・本棚やカウンターの一部
などが多いです。
避けた方がよい場所としては、
・直射日光が長時間当たる場所
・湿気がこもりやすい押し入れやクローゼットの奥
・エアコンの風が直接当たる場所
などがあります。
中の遺骨は、とてもゆっくりですが湿気を含んでいきます。
ときどきふたを開けて乾いた空気に触れさせてあげたり、商品によっては乾燥剤を一緒に入れる場合もあります。
「毎月1回きっちりお手入れしなきゃ」と思いすぎるとしんどくなります。
思い出したときにほこりを払って、「元気にしてるよ」と声をかけられたら、それだけでも十分です。
ミニ骨壺は、素材や色、形でお部屋の雰囲気が大きく変わります。
いくつか候補を眺めながら、「家のどこに、どんなふうに置いてあげたいか」をイメージしてみてください。
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・ガラスや陶器など、素材別のミニ骨壺を見る(珪藻土/セラミック/アルミ/ガラス)
・リビングになじみやすい木製ミニ仏壇を見る
・フォトフレーム一体型のメモリアルステージを探す
分骨・粉骨・家族との話し合いで気をつけたいこと
手元供養を考えるときに、もう一つ大切なのが「どこまでを手元に残し、どこまでをお墓や納骨先に納めるか」という点です。
・「全部を手元に置く」のか
・「一部だけ分骨して手元に置き、残りはお墓や納骨堂に納める」のか
・「しばらくは全体を自宅で安置し、その先で納骨や散骨をする」のか
どれが正しいということはありませんが、家族の中で認識がバラバラだと、あとから「そんなつもりじゃなかった」とすれ違うこともあります。
できれば、
・誰がどの形の手元供養を希望しているのか
・将来、お墓や永代供養に切り替える可能性があるか
・分骨をするなら、どのタイミングでどこに依頼するか
を、ざっくりでも話しておけると安心です。
話し合いがしんどいときは、「今すぐ結論を出す会議」にしなくて大丈夫です。
「こういう選択肢もあるらしいよ」「私はこう感じているよ」と、まず気持ちを共有するところからでも十分です。
亡くなったあとの事務手続きや、誰が何を担うかまで不安な場合は、死後の事務を専門家に任せる 死後事務委任の解説ページ
も参考になるかもしれません。お金の管理や施設退去の手続きなど、「残された人の負担をなるべく軽くしておきたい」という思いを形にする方法の一つです。
治療や延命の希望を含めて、元気なうちから話し合っておくことについては、 ACP(人生会議)を始めるタイミング
でも触れています。手元供養の話も、その延長線上の「どう見送られたいか」を考える一つのきっかけになります。
手元供養とお墓・納骨堂・永代供養・散骨の組み合わせ方
手元供養は、「お墓を持つ/持たない」のどちらとも組み合わせることができます。
例えば、次のようなパターンがあります。
・お墓は建てず、永代供養+手元供養のミニ骨壺
・実家のお墓に納骨しつつ、自分の家にはペンダントまたはミニ骨壺を少しだけ
・将来の引き継ぎを考えて永代供養に申し込み、その節目までの数年間だけ手元供養を続ける
「この組み合わせ方はNG」という決まりはありません。
お墓を建てない場合の選択肢(永代供養・樹木葬・納骨堂など)の違いは、 お墓を買わないという選択肢──永代供養・樹木葬・納骨堂の違い
で、費用感や向き不向きも含めて整理しています。
手元供養とあわせて、「全体としてどんな供養の形を目指したいか」をイメージしてみてください。
疲れや不安が強い時期は、とにかく先のことまで考えるのがつらいものです。
いったん「いま心が落ち着く形」を手元供養で整えておき、
少し心と生活が落ち着いてきたところで、お墓や永代供養・散骨のことを考えていく、という流れもよくあります。
なお、葬儀後の手続きや役所への届出など、「何から手をつければいいか分からない」という場合は、
チェックリスト形式で流れをまとめた 死後の手続きチェックリスト
もあわせて見ていただくと、全体像がつかみやすくなります。
迷ったときの決め方のコツ
ここまで読んで、「それでもやっぱり迷うなあ」という方も多いと思います。
そんなときは、次の3つの問いを、紙やスマホに書き出してみてください。
・この手元供養は、「誰のため」に用意したいですか?
(自分のため/家族のため/将来の子や孫のため など)
・「どんなとき」にそばに感じられたら安心できそうですか?
(通勤中/家でくつろぐとき/眠る前 など)
・「何年くらい」続けたいイメージがありますか?
(一周忌ごろまで/自分が元気でいるあいだずっと/区切りが来るまで決めない など)
この三つが少し言葉になってくると、
・毎日身につけるより、家の一角で静かに見守ってほしい
・誰かに引き継ぐつもりはないから、無理のない価格帯でいい
・今はまだ、シンプルなミニ骨壺だけで十分かもしれない
といった、自分なりの答えが見えやすくなります。
正解は一つではありませんし、時間がたてば答えが変わってもかまいません。
「そのときの自分が、できる範囲で選んだ形」は、それだけで十分に尊いものです。
生前のうちから少しずつ整えておきたいと感じたら、
10分単位でできる片づけのコツをまとめた 生前整理のページ
なども、気持ちと暮らしを整えるヒントになると思います。
よくある質問
Q1. 手元供養は「良くない」「成仏できない」と聞きましたが、本当ですか?
A1. 手元供養をしたからといって、故人が成仏できないということはありません。大切なのは、どこにあっても故人を思い、感謝や祈りを向ける気持ちです。お墓に納めるか、手元に置くかは、それぞれの家族が選ぶスタイルの違いと考えて大丈夫です。
Q2. 遺骨ペンダントやリングを、ずっと身につけていても良いですか?
A2. 身につける期間や頻度に決まりはありません。ずっと身につけていてもいいですし、気持ちや体調に合わせて「今日は外しておこう」と調整しても大丈夫です。素材によっては汗や水分で傷みやすいものもあるので、ときどき状態を確認してあげると安心です。
Q3. ミニ骨壺は、どこに置くのが一般的ですか?
A3. 多いのはリビングの一角や、仏壇のそば、寝室のチェストの上などです。直射日光や湿気の強い場所、エアコンの風が直接当たる場所は避けた方が無難です。ご家族が手を合わせやすく、あなたの心が落ち着く場所を選んであげてください。
Q4. 将来お墓や永代供養に切り替えたくなった場合、どうすればいいですか?
A4. 手元供養からお墓・納骨堂・永代供養へ切り替えることは可能です。ミニ骨壺やペンダントから遺骨を取り出し、寺院や霊園の指示に従って納め直します。「今は自宅で、将来は永代供養に」と段階的に進める方もいらっしゃいます。一度決めた形に縛られすぎず、「そのときの自分たちに合う形」に少しずつ整えていければ十分です。
悲しみがまだ新しいうちは、「どの選択肢が正しいか」よりも、「今日をなんとか過ごすこと」で精一杯だと思います。
手元供養は、その中で「少しだけ心が落ち着く場所」を用意するための手段の一つです。
選ぶプロセスそのものが、故人との時間をゆっくり振り返るきっかけにもなります。
焦らず、できるところから、一歩ずつ整えていきましょう。

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