はじめに
遠方に住む家族や、高齢で移動がむずかしい親族がいるとき、「せめてオンラインで一緒に手を合わせられないか」と相談を受けることが、ここ数年でぐっと増えました。
オンライン供養は、決して「手抜き」ではなく、そのときの事情に合わせて形を整えるためのひとつの方法です。
一級葬祭ディレクターとしての現場経験もふまえて、
・オンライン法要(オンライン供養)の基本的な考え方
・Zoomを使った配信準備〜当日の流れ
・スマホだけでやるときの最低限セットと、余裕があれば揃えたい機材
・親族に送れる案内文・招待メールのテンプレ
・香典やお供えをオンラインで受け取るときの考え方
をまとめました。
全体像から整理したい方は、あわせて
葬儀の基本知識まとめ|流れ・費用・マナーをやさしく解説
も見ていただくと、位置づけがわかりやすくなると思います。
この記事でわかること
・オンライン供養・オンライン法要の基本的な考え方と、向いている場面/慎重にしたい場面
・Zoomを使った配信準備のステップと、当日までの段取り
・スマホだけで行う場合の最低限セットと、あれば安心な機材
・親族へ送るオンライン案内文・招待メールのテンプレ(コピペOK)
・香典・お供えをオンラインで受けるときのマナーと伝え方
3行まとめ
・オンライン供養は「事情があるからこそ選ぶ、やさしい選択肢」。無理に全員集合を目指さず、家族の負担が軽くなる形を選んで大丈夫です。
・配信の成功ポイントは「音が聞こえること」と「事前案内」。スマホ+三脚+Wi-Fiが基本セットです。
・香典やお供えは、現金・振込・オンライン供花など、喪家の方針を案内文で先に伝えておくと、トラブルがぐっと減ります。
オンライン供養って何?まずはイメージ整理から
細かいルールの前に、「どんなことを指してオンライン供養と言うのか」をざっくり整理しておきます。
オンライン法要・オンライン供養という言葉は、現場では次のように使われることが多いです。
・オンライン法要
お寺での読経や、自宅での法要の様子をZoomなどで中継し、離れた場所から一緒に手を合わせてもらうもの。
・オンライン供養
法要に限らず、お盆・命日・一周忌などに、オンラインで集まって故人を偲ぶ時間を共有すること全般。
形としては、大きく2つに分かれます。
・対面法要+オンライン参加を併用するハイブリッド型
・すべてオンラインで完結する完全オンライン型
どちらを選ぶかは、
・菩提寺(お寺)の考え方
・高齢の親族の負担
・会場設備(Wi-Fiが使えるかどうか)
などを踏まえて決めていきます。
香典や弔電の全体像を整理しておきたいときは、
香典・弔電の基本まとめ|マナー・文例・受付の実務ガイド
もあわせて読んでおくと、全体のつながりが見えやすくなります。
オンライン供養が向いている場面・慎重にしたい場面
「せっかくなら直接集まったほうがいいのでは」と悩む方も多いので、向き・不向きも整理しておきます。
オンライン供養が向いているのは、例えばこんなケースです。
・遠方に住む家族・親族が多く、移動費や宿泊費の負担が大きい
・高齢で外出が難しい方、持病のある方が多い
・感染症・天候・災害などで、急に集まりにくくなった
・海外在住のご家族にも、節目の読経をリアルタイムで届けたい
一方で、少し慎重に考えたい場面もあります。
・菩提寺がオンライン配信にあまり前向きでない
・親族の中に「法要は対面で行うべき」という強い意見の方がいる
・どうしても配信環境が整わない(電波が非常に不安定など)
この場合は、
・対面法要を基本にしつつ、数名だけオンラインで参加してもらう
・今回は対面のみで行い、オンラインは別の場面(思い出を語る会など)で活用する
といった折衷案も選択肢に入ります。
喪主の立場で全体像を把握したいときは、
喪主がやること全部リスト|失敗しない準備と心構え
も参考になると思います。
準備するもの|最低限セットと、余裕があればセット
オンライン供養の機材は、こだわり出すときりがありません。
ここでは、「まずは十分」と言えるラインと、「余裕があれば」のラインを分けて整理します。
スマホだけで行う場合(最低限セット)
・スマホまたはタブレット
・安定したWi-Fi(会場の無料Wi-Fi/ポケットWi-Fiなど)
・スマホ用の三脚(手ブレを防ぐため)
・充電ケーブル・モバイルバッテリー
三脚は、法要中に手で持ち続けるのを避けるためにも、あったほうが安心です。
「スマホ 三脚」「タブレット 三脚」などで検索すると、3,000円前後からしっかりしたものが見つかります。
なお、葬儀社や会館によっては、
・館内Wi-Fiの貸出(パスワード付き)
・スマホ用三脚や簡単なスタンドの貸出
を行っているところもあります。
コロナ禍の頃はオンライン葬儀・オンライン法要のニーズが一気に増えたため、設備を整えた会館も多くありました。最近は利用頻度が少し落ち着いて、「言えば貸してくれるけれど、積極的には案内していない」というケースも増えています。
「自分たちで機材を全部そろえないとダメかな?」と不安なときは、事前の打ち合わせや会場見学のときに、
「オンラインでつなぎたいのですが、Wi-Fiは使えますか?」
「スマホ用の三脚やスタンドはお借りできますか?」
と、ひと言聞いてみると良いですよ。
できれば追加したいもの
・外付けマイク(ピンマイク・ガンマイクなど)
・簡易照明(リングライト・スタンドライト)
・ノートパソコン(画面共有やチャット対応がしやすい)
外付けマイクは、「声が遠い」「エアコンの音で聞こえにくい」といったトラブルをかなり減らしてくれます。
Amazonなら、
・「スマホ ピンマイク」
・「オンライン会議 マイク」
・「リングライト 三脚セット」
といったキーワードで探すと、レビューの多い商品が見つかりやすいです。
あとからゆっくり選びたい場合は、この記事の途中に設置しているPRボックスからも、「三脚」「ピンマイク」「リングライト」などの候補をのぞいてみてください。
Zoomでオンライン法要を開くときの段取り(全体フロー)
ここからは、Zoomを使ってオンライン法要を行う前提でお話ししていきます。
流れをざっくり書くと、次のようなイメージです。
・1か月〜2週間前
菩提寺や葬儀社に「オンライン参加を併用したい」旨を相談する。
葬儀の事前相談の一環として検討する場合は、
葬儀の事前相談は必要?メリット・デメリットをやさしく解説
も参考になります。
・2週間〜1週間前
配信場所(本堂・会館の式場・自宅の仏壇前など)を確認し、電源・Wi-Fiなどの環境をチェック。
会館によっては館内Wi-Fiや三脚を貸してくれることもあるので、「オンラインでつなぎたい」と最初に伝えておくとスムーズです。
・1週間前〜数日前
Zoomミーティングを作成し、ご家族の中で一度接続テストをしておく。
ミーティングID・パスコード・URLを整理し、招待文の下書きを作る。
・前日
親族へ案内メールやLINEを送り、必要な方には「接続方法の簡単な説明」を添える。
・当日
開始15〜20分前にホストがZoomを開き、音声と映像を最終確認。
法要開始後は、必要な場面でオンライン側にも一声かける。
参列者側の服装や香典の考え方は、
参列者のマナー【2025】服装・香典・お供え・当日の動き
もあわせてご覧いただくと、イメージが揃いやすくなります。
Zoomミーティングの基本設定と、押さえておきたいポイント
Zoomの細かい操作手順は公式サイトに譲りますが、法要で使うにあたって最低限押さえておきたいのは次の点です。
・ミーティングにパスコードを付ける(外部の人が入りにくくするため)
・「参加時はミュート」にチェックを入れておく
・ホスト・共同ホストを誰にするか決めておく(喪主か、ネットに慣れている親族か)
・録画するかどうかを、前もって寺院・家族で相談しておく
録画データをあとから共有する場合は、
・録画を見られるのは家族・親族のみ
・視聴期間をいつまでにするか
といったルールも、最初に決めておくと安心です。
親族に送るオンライン案内・招待文テンプレ
ここからは、実際に使える案内文のテンプレートを3パターン用意しました。
必要に応じて、住所や日時などを書き換えてお使いください。
パターン1:対面+オンライン併用(四十九日・一周忌など)
対面での法要を基本としつつ、「来られない方はオンラインでも参加できます」という形です。
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件名:◯◯(続柄) 四十九日法要のご案内(オンライン参加のご案内あり)
◯◯(差出人名)です。
このたび、◯◯(故人名)の四十九日法要を下記の通り営むことになりましたので、ご案内申し上げます。
日時:◯月◯日(◯)◯時◯分より
場所:◯◯寺 本堂(住所:◯◯)
当日は本堂での法要の様子を、オンライン(Zoom)でもおつなぎする予定です。
ご都合によりご来寺が難しい方は、ご自宅からご参加いただくことも可能です。
【オンライン参加をご希望の方へ】
下記URLよりご参加ください。
ZoomミーティングURL:
ミーティングID:
パスコード:
開始15分前より接続いただけます。
ご不明な点があれば、◯◯(連絡先)までお知らせください。
ご多用のところ恐れ入りますが、出欠(対面/オンライン/欠席)について、◯月◯日頃までにお知らせいただけますと幸いです。
なお、香典につきましては、当日ご持参が難しい方には、銀行振込またはキャッシュレスにてお受けすることも検討しております。
詳しくは個別にご案内いたしますので、ご希望の方はお知らせください。
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キャッシュレス香典のマナーや案内文については、
香典はキャッシュレスでもいい?マナー・文例・受付実務【2025年版】
でくわしく解説しています。
パターン2:完全オンラインで行う場合
高齢のご家族の体調や、距離の制約から、今回は完全オンラインで行うイメージです。
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件名:◯◯(続柄) 一周忌法要のご案内(オンライン開催)
◯◯(差出人名)です。
このたび、◯◯(故人名)の一周忌にあたり、下記の通りオンラインにて法要を営むことになりましたので、ご案内申し上げます。
本来であれば皆様にお集まりいただきたく存じますが、
距離や体調のご負担を考え、今回はご自宅からご参加いただく形を選びました。
日時:◯月◯日(◯)◯時◯分より(30〜40分程度を予定)
形式:オンライン(Zoom)
【ご参加方法】
開始時刻の10分前になりましたら、下記URLよりご参加ください。
ZoomミーティングURL:
ミーティングID:
パスコード:
ご自宅で、可能であれば小さなお花やお線香をご用意いただき、
お時間になりましたら一緒に手を合わせていただければ幸いです。
なお、香典やお供えにつきましては、お気遣いなくとの気持ちではございますが、もしお心づかいを賜る場合には、
・現金書留
・銀行振込
・オンラインでのお供え(供花・弔電など)
いずれかでお願いできればと存じます。
詳しくは、別途ご案内を同封(またはメールにて記載)いたします。
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オンラインの弔電や供花の送り方は、
弔電の選び方|宛名・差出人・いつまで?台紙の選び方と最短140字文例
弔電の送り方|本日中・当日・明日届くの最短ルート
も参考になります。
パターン3:録画をあとから共有する場合
当日参加できない方向けに、録画URLを共有する場合の一文です。
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件名:◯◯(続柄) 四十九日法要のご報告(録画視聴のご案内)
◯◯(差出人名)です。
先日◯月◯日に執り行いました、◯◯(故人名)の四十九日法要につきまして、ご報告を兼ねてご連絡申し上げます。
当日の様子をオンラインで録画しており、
◯月◯日まで、下記のURLよりご覧いただけるようにいたしました。
視聴URL:
パスワード:
お時間のあるときに、ご自宅から静かに手を合わせていただければ幸いです。
ご不明な点があれば、どうぞお気軽にお知らせください。
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当日の進行と、よくあるトラブル対策
オンライン法要の当日は、だいたい次のような流れになります。
・開始15〜20分前
ホストがZoomに入り、音声・カメラの最終確認。
寺院の方にも「オンラインの音量、問題ないでしょうか」と一言確認。
・開始5分前
参加者が順次入室。
「本日はご参加ありがとうございます。開始までミュートのままでお待ちください」と声をかける。
・法要中
カメラは基本的に固定。
焼香の場面は、喪主が一歩前に出て焼香する様子が映る程度で十分です。
・終了時
喪主からオンライン参加者に一言ご挨拶をして、順次退室してもらう。
よくあるトラブルと、簡単な対処例も載せておきます。
・音が聞こえない
→ まずはホスト側のマイクアイコンがミュートになっていないか確認。
→ 参加者にはチャットで「一度退出→再入室」をお願いする。
・画面がフリーズする
→ いったんビデオだけオフにし、音声優先に切り替える。
→ どうしても厳しい場合は、後日録画共有に切り替えることも考える。
・雑音が入る
→ ホスト側から、参加者を一括ミュートする。
→ 「一旦こちらでミュートにさせていただきます」と一声かける。
こうした「トラブル時の一言」をあらかじめメモしておくと、焦りが少なくて済みます。
オンラインでも変わらないマナー|服装・背景・香典・お供え
オンラインだからといって、マナーが大きく変わるわけではありません。
基本は、通常の法要と同じ考え方です。
・服装
黒やダークカラーの落ち着いた服装を基本に。
詳しくは
参列者のマナー【2025】服装・香典・お供え・当日の動き
で解説しています。
・背景
生活感が多少見えていても大丈夫です。
見られたくないもの(洗濯物・個人情報が写るもの)だけ、画角から外しておきましょう。
・香典
現金での香典は、後日郵送(現金書留)か、次に会うタイミングでお渡しする形が多いです。
キャッシュレスを併用する場合は、
香典はキャッシュレスでもいい?マナー・文例・受付実務【2025年版】
をベースに、「現金でもキャッシュレスでもどちらでも大丈夫」と伝えておくと安心です。
・お供え
オンライン供花・弔電・ギフトなど、インターネットで完結するサービスも増えています。
送り方に迷ったときは、
弔電の選び方|宛名・差出人・いつまで?台紙の選び方と最短140字文例
弔電の保管と処分|いつまで取っておく?手放し方の目安
あたりの記事も見ていただくと、イメージが整いやすいと思います。
PR オンライン供養の配信にあると便利なもの
オンライン配信の機材は、一度揃えておくと、法要以外にも
・親族でのオンライン近況報告
・法事の打ち合わせ
・仕事のオンライン会議
などにも活用できます。
Amazonで探しやすいキーワードと、あると便利なアイテムを挙げておきます。
・「スマホ 三脚」
目線の高さに固定できるものを選ぶと、画角が安定します。
・「スマホ ピンマイク」「オンライン会議 マイク」
声がクリアに届きやすくなり、ご年配の参加者にも聞き取りやすくなります。
・「リングライト 三脚セット」
室内が少し暗くても、顔や祭壇まわりが明るく映ります。
・「Webカメラ 三脚ネジ対応」
パソコンで配信する場合、角度調整がしやすくなります。
アソシエイトリンクを使う場合は、これらの商品ページや検索結果ページに、ご自身のIDを付けてリンクしておくと、日常の買い物からも少しずつ還元が期待できます。
どこまでやるか迷ったときの考え方
オンライン供養は、どうしても「ここまでやらないと失礼になるのでは」と不安になりがちです。
ただ、現場でたくさんのご家族を見てきた感覚としては、
・カメラが少し傾いていても
・音が一瞬途切れてしまっても
故人を想って手を合わせる気持ちがあれば、それだけで十分に立派な供養だと感じています。
完璧な配信を目指すよりも、
・音がそれなりに届くよう、マイクや三脚だけは整える
・事前の案内文を丁寧にして、当日の流れが分かるようにする
・トラブルが起きたときに、参加者に一言お詫びと説明を添える
この三つができていれば、「やれる範囲で精一杯やった」と胸を張っていただいて大丈夫です。
終活や供養の選択肢に迷ったときは、
終活の基本まとめ|はじめてでも迷わない全体像と優先順位
も見ていただきつつ、「わが家としてどんな形なら納得できるか」をゆっくり考えてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. オンライン法要だけでも失礼になりませんか?
A. 地域やお寺の考え方にもよりますが、事情をきちんと説明し、対面での法要と同じように丁寧に準備していれば、失礼とまでは見られないケースも増えています。不安なときは、まず菩提寺やごく近い親族に相談してみてください。
Q. お寺がオンラインに慣れていないようで心配です。どうお願いすればいいですか?
A. 「遠方の家族が多く、できればオンラインで読経の様子を共有したい」と、事情と希望を正直にお伝えしてみてください。それでも難しい場合は、法要後に喪主が短い挨拶動画や写真を家族に送る、という代替案もあります。
Q. 録画してもいいのでしょうか?
A. お寺によって考え方が異なりますので、必ず事前に確認してください。録画をする場合も、喪主・親族間で「誰がどこまで見られるか」「いつまで残すか」を決めてから行うと安心です。
Q. 香典をキャッシュレスにしたいのですが、全員統一しないといけませんか?
A. 実務的には「現金でもキャッシュレスでもどちらでも大丈夫」という運用が現実的です。詳細は
香典はキャッシュレスでもいい?マナー・文例・受付実務【2025年版】
で、案内文の例も紹介しています。
Q. 当日、どうしても接続できない方が出た場合は?
A. 無理に当日中に何とかしようとせず、後日「録画のURLをお送りする」「簡単なご報告の手紙を添えて香典をお送りする」といったフォローで十分です。大切なのは、参加できなかったことを責めず、「気に掛けてくださってありがとうございます」とお伝えすることだと思います。
まとめ
オンライン供養・オンライン法要は、距離や体調、さまざまな事情を抱えたご家族にとって、「それでも一緒に手を合わせるための手段」です。
三脚やマイクを揃えることも大事ですが、いちばんの土台になるのは、
・遠くからでも参加してほしいという気持ち
・無理をさせたくないという思いやり
だと感じています。
スマホ一台と、少しの準備でも、できることはたくさんあります。
この記事が、わが家にとってちょうどいいオンライン供養の形を考えるヒントになればうれしいです。

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