ACP(人生会議)はいつ始める?タイミングの見つけ方と上手な声かけ

深呼吸してから読み始めましょう。急がなくて大丈夫。今の暮らしに合わせて少しずつ、が合言葉です。


ACP(人生会議)とは(かんたんに)

  • ACP=アドバンス・ケア・プランニング。日本語では人生会議
  • 病気や年齢に関わらず、これからの医療・介護・暮らしの希望を家族と話し合い、メモに残すことです。
  • 似た言葉:リビングウィル(自分の希望を文書で残す)/DNAR(心臓が止まった時に蘇生をしないという指示)。
    • たとえ話:
      • ACP=家族と日常的に話すこと
      • リビングウィル=話し合いの結果を紙に
      • DNAR=緊急時だけの救急処置の方針

ACP タイミング|はじめどきの“生活の合図”

「いつ言い出せばいい?」の不安を、暮らしの節目に置き換えます。

生活の合図で始める

  • 通院の前後(診察の前に「先生に聞きたいことを1つ決めよう」)
  • 誕生日・記念日(「これからの願いを1つだけ書こう」)
  • 保険や介護保険の更新時(書類づくりの流れで)
  • 引っ越し・同居の開始(生活が変わる時)

病気や介護の場面で始める

  • 病名を聞いたあと、気持ちが落ち着いた頃
  • 要介護認定の申請・更新の時
  • 入退院・在宅医療への切替の説明を受けた時

避けたほうがよいタイミング

  • 受診直後の混乱時(その日は休む)
  • 急な体調悪化のさなか(回復を待つ)
  • 家族が極端に疲れている時(短時間の挨拶だけに)

ひと声テンプレ
「次の通院の前日に、“してほしくないこと”を一つだけ決めよう。難しければ、また次に続けよう。」


ACP 人生会議 進め方|家族での“やさしい段取り”

最初の5分(切り出し)

  • 正解を決める会議じゃないから、思いついたことだけ話そう」
  • 「今日は一つだけ決められたら十分」
  • 嫌なことから先に。『これはやめてほしい』を1つ」

30分の進行“台本”

  1. 導入 5分 … 目的を共有(上の切り出し文)
  2. 医療 10分 … 延命治療・痛みをへらす治療の希望
  3. 介護 10分 … 自宅/施設の希望、使える費用の目安
  4. 看取り 3分 … 場所や連絡先の希望
  5. まとめ 2分 … 次回までの宿題(例:「好きな病院食・苦手な処置」)

断られた時の“次の一言”

  • 今はしんどいよね。じゃあ、嫌なことだけ紙に書いて渡して」
  • 秋の健診の前に、10分だけ続きを」
  • 私の希望から話してみるね。合わないところだけ直してほしい」

同席者の選び方

  • 家族+かかりつけ医またはケアマネ(介護の相談員)
  • 感情が強く出やすい人がいる場合は、別日で個別面談に分ける

記録のしかた|ACP 記録 用紙・事前 指示 書・メモ

書式は自由。読めること・見つかることが一番大事です。

穴あきメモ(コピペOK)

【医療】してほしい/してほしくない
・延命治療:[受けたい/様子を見て判断/受けたくない]
・痛みをへらす治療(緩和ケア):[希望する/相談して決める]
【介護】自宅/施設の希望、費用の目安(     円/月)
【看取り】場所(自宅・病院・施設)/連絡してほしい人
【代理人】相談の中心になってほしい人(     )
【大切にしていること】(例:苦手な処置、宗教・習慣、ペット)
【更新日】西暦    年   月   日

エンディングノートとのつなぎ

  • このメモをノートの該当ページに差し込む
  • 位置:リビングの引き出し家計ファイル家族の共有フォルダ(クラウド)
  • 共有:家族にコピーを1部ずつ更新日を表紙に

医療の言葉を“生活の言葉”に(リビングウィル・DNARの違い)

  • 延命治療命を長くする強い治療(人工呼吸器、強い点滴など)
  • 緩和ケア痛みや苦しさを減らす治療
  • DNAR心臓が止まった時胸骨マッサージ・電気ショックをしない方針
  • リビングウィル自分の希望を書いた紙(署名日・保管場所を家族と共有)
  • ACPふだんの会話で希望を確かめ続けること(季節ごとに見直し)

👉死後事務委任契約の実務:解除条項/デジタル遺品/葬儀方式の指定を図解

相談先と準備物(ACP ケアマネ/かかりつけ医)

どこに相談?

  • かかりつけ医(通院先)
  • ケアマネ(介護の相談員)/地域包括支援センター
  • 訪問看護・在宅医療の窓口

電話のひと声テンプレ

  • 人生会議(ACP)の相談をしたいので、家族同席で短い時間をお願いできますか。」
  • 記録用紙の書き方も教えてください。」

持ち物

  • お薬手帳・病歴メモ
  • 保険証・介護保険の番号(番号はコピーに)
  • 今日決めたい1項目(例:蘇生の方針/看取りの場所)

認知症が心配なときの始め方(ACP 認知症)

短時間・分割で

  • 1回10〜15分午前中など疲れにくい時間に
  • 写真や日記など、楽しい話題から入る

否認・不安への返し方

  • 今は決めなくていいよ。今日は私の話を聞いてくれるだけで助かる」
  • 困らないように連絡先だけ先に書いておこう」

書き方

  • チェック式丸で囲む式のほうが楽
  • 1枚が難しければ、付せんに1項目ずつ書いて、後でまとめる

よくある質問(Q&A)

Q. 法的な効力はありますか?
A. ACPメモ自体に法的効力は基本なし。でも、家族や医療者の判断の支えになります。法的な遺言は別に作成を。

Q. 家族が話し合いを嫌がります。
A. 断られたら一度引くがコツ。「嫌なことだけ教えて」「通院の前日だけ10分」など小さな提案を。

Q. 何から書けば?
A. ①連絡先してほしくないこと の順で。迷ったら「DNARをどうするか」ではなく、まず「苦しさを減らす治療の希望」から。

Q. 書いた紙はどこへ?
A. リビングの引き出しなど家族が見つけやすい場所。コピーを家族へ1部ずつ。更新日を大きく。


まとめ|次の一歩

焦らなくて大丈夫。今日は“合図”を一つ決めるだけで前進です。


例:「次の通院の前日に、嫌なことを一つメモに書く」。それで十分。


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注意:ここでの説明は一般向けです。治療内容の決定は、主治医・医療チームとご相談ください。

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