はじめに
香典返しや法事のお返しを準備するとき、ネットショップやカタログに出てくる
・弔事用のし
・黒白/黄白の水引
・結び切り・あわじ結び
・無地のし
こうした言葉を見て、「どれを選べば正解なんだろう…」と手が止まってしまう方は多いです。
きびしいマナー本を全部暗記する必要はありません。
弔事については、
・のしは付けず「掛け紙+水引」だけにする
・水引は「結び切り(あわじ結び)」
・色は「黒白」か、地域で一般的な色(関西なら黄白など)
このあたりを押さえておくと、大きく外すことはまずありません。
香典の金額や表書きまで含めて全体を整理したい方は、先に 香典相場の早見表と正しい書き方(表書き・中袋・連名まで)
をざっと読んでおくと、この記事の内容もつながりやすくなります。
ここでは、一級葬祭ディレクターとしての現場経験もふまえて、
・そもそも「のし」と「掛け紙」は何が違うのか
・弔事に使う水引の結び方と色の基本
・関東と関西での水引の色の違い
・「無地のし」をどう理解すれば安心か
を、必要なところだけギュッとしぼって整理しておきます。
「ここまで分かれば十分」というラインを、一緒に作っていきましょう。
この記事でわかること
・のしと掛け紙の違いと、「弔事でのしを付けない」理由
・弔事で使う水引の基本(結び切り・あわじ結び/蝶結びとの違い)
・黒白と黄白、双銀など水引の色の意味と地域差
・香典返しや法事のお返しで「無地のし」をどう選べばよいか
・困ったときに迷子にならない、確認の優先順位
3行まとめ
・弔事では、基本的に「のし」は付けず、「掛け紙+水引」だけを使う。
・水引は「結び切り/あわじ結び」が基本。色は黒白が全国標準、黄白は関西などの地域色。
・無地のしは本来お礼用の紅白。弔事で出てくる「無地」は「表書きなしの弔事用掛け紙」と理解すれば安心。
のしって何?弔事で使わないのが基本
まず、いちばん勘違いが起きやすい「のし」から整理しておきます。
・のし = 本来は「熨斗鮑(のしあわび)」
・長寿や繁栄を願う“お祝い専用の飾り”
・今は、右上の小さな黄色いマークとして印刷されている
というのが、本来の意味です。
そのため、
・結婚・出産・入学・長寿祝い・お中元・お歳暮などの慶事 → のしを付ける
・葬儀・法事・お悔やみ・香典返しなどの弔事 → のしは付けない(掛け紙のみ)
という整理になります。
「お葬式なのに、のしが付いているとおかしいの?」と心配される方もいますが、弔事では“お祝いの印”であるのしを外すことで、場の空気にそろえているイメージです。
葬儀や法事の全体像を先に見ておきたい方は 葬儀の基本知識まとめ|流れ・費用・マナーをやさしく解説
もあわせてどうぞ。のし・香典・服装の位置づけがつかみやすくなります。
掛け紙と「弔事用のし」の関係
現場でよくややこしくなるのが、「弔事用のし」という表現です。
本来の用語としては、
・お祝い用 → のし紙(のし付き)
・弔事用 → 掛け紙(のし無し。水引だけ)
と分けて考えるのがスッキリします。
ただ、スーパーやネットショップでは、弔事用の掛け紙のこともまとめて
・弔事のし
・仏事用のし
などと説明していることが多く、言葉がごちゃっとしやすいところです。
この記事では、意味を混ぜないために、
・「のし」…お祝い専用の飾り
・「掛け紙」…弔事用の紙(のし無し、水引だけ)
という前提で話を進めます。
法事のお供えの掛け紙の基本は、こちらの記事でも触れています。
・法要全体の流れを整理したい場合は
→ 法事・法要のお供えは何がいい?花・お菓子・金額・掛け紙の基本ガイド
・お彼岸など季節の仏事で迷ったときは
→ お彼岸のお供えはいつ?何を用意する?
弔事で使う水引の結び方
水引には、もともと
・封をしたままの「未開封の証」
・贈り物の格を少しだけ引き上げる飾り
・結び目に思いを込めるしるし
といった意味があります。
弔事でいちばん大事なのは「結び方」です。
・結び切り(固結び)
→ ほどけない結び方。「二度と繰り返したくないこと」に使う
・あわじ結び(あわび結び)
→ 両端を引くとより固く結ばれる。結び切りと同じく“繰り返したくないこと”に使う
・蝶結び
→ 何度でもほどいて結び直せる。「何度あっても良いお祝い」に使う(出産・進学・お中元など)
葬儀・法事では、「結び切り」または「あわじ結び」だけを使う、と覚えておけばまず間違いありません。
香典の水引や表書き、宗派ごとの違いまで含めて整理した記事も用意しています。
詳しく知りたい方は 香典相場の早見表と正しい書き方(表書き・中袋・連名まで)
をチェックしてみてください。
水引の色の基本ルール
次に、水引の「色」の話です。
ここは、とくに地域差が出やすいところなので、「全国ルール」と「地域の習慣」を分けて考えると楽になります。
黒白の水引(全国共通の“標準”)
・全国的な標準の弔事用の色
・通夜・葬儀・告別式の香典、法事のお供えなど、どこに出しても無難
・宗派がわからない先方への香典、遠方の親戚への香典返しなど、迷ったときの安全パイ
というイメージで大丈夫です。
弔事全般をまとめて確認したいときは、ハブページとして 香典・弔電の基本まとめ|マナー・文例・受付の実務
も役に立ちます。
黄白の水引(関西などの地域色)
関西にお住まいの方は、「弔事=黄白の水引」というイメージのほうが強いかもしれません。
・京都を中心に、関西〜北陸〜山陰などで使われることが多い
・葬儀から法事まで、仏事全般に黄白を使う地域もある
・関東のマナー本では「主には黒白、法事で黄白」と書かれていることもある
こうした理由から、
・関東目線 → 「弔事は黒白が普通。黄白は法事寄り」
・関西目線 → 「弔事なら黄白が普通。黒白はあまり見ない」
というズレがよく起きます。
この記事では、
・全国向けの説明としては「黒白が標準」
・黄白が主流の地域では、その習慣に合わせれば問題なし
というスタンスでお伝えしておきます。
双銀・白一色の水引(少し格式を上げたいとき)
場面によっては、次のような水引を使うこともあります。
・双銀(銀色だけの水引)
・白一色の水引
たとえば、
・お寺への御布施や御膳料
・お世話になった方への、やや格式の高いお礼
などで、「黒白の水引よりも、少し柔らかく・静かな印象にしたい」ときに選ばれることがあります。
細かく使い分けようとすると疲れてしまうので、
・一般的な香典や香典返し → 黒白 or 黄白
・お布施・御膳料など → 地域やお寺の言い方に合わせて、黒白/黄白/双銀のいずれか
くらいの理解で十分です。
お布施の包み方や金額感が不安なときは、 法事・法要のお供えは何がいい?花・お菓子・金額・掛け紙の基本ガイド
も一緒に読んでおくと安心材料が増えます。
地域差との付き合い方(迷ったときの決め方)
水引の色は、とくに地域差・お寺ごとの差が大きいポイントです。
「どれが正解?」を探し続けるよりも、「この順番で確認する」と決めておくと迷いにくくなります。
おすすめの優先順位は、
1. その場を仕切っている人(葬儀社・お寺)の指示
2. 喪家(施主さん)の希望
3. 地域の一般的な慣習
4. それでもわからなければ「黒白の結び切り」にしておく
という流れです。
参列者側としてのマナー全体を整理したい方は、 参列者のマナー【2025】服装・香典・お供え・当日の動き
や 葬式の服装と数珠の基本|男女・学生・季節・小物まで
も参考になります。
「ここまで確かめたのなら、あとは大丈夫」と、自分の中で線を引いてあげることも大切です。
完璧より、“無理のない範囲での丁寧さ”を目指していきましょう。
「無地のし」をどう理解すれば安心か
最後に、ややこしい「無地のし」について整理します。
本来の意味としては、
・無地のし = 表書きの文字が入っていない “紅白ののし紙”
・ちょっとしたお礼やご挨拶(粗品、お心ばかりなど)に使う
という、完全に「お祝い側」のアイテムです。
ところが、香典返しや仏事ギフトのサイトを見ると、
・「弔事用・無地のし」
・「表書き無し(無地のし)」
といった表現が出てきます。
この場合は、厳密には
・黄白または黒白の水引が印刷された掛け紙
・上段の表書きを空欄にした状態(あとから名入れだけ/何も入れない)
という意味で使われていることが多いです。
弔事で「無地」と書いてあれば、
・紅白の“お祝い用のし”ではない
・弔事用の掛け紙で、表書きが入っていないだけ
と理解しておけば、大きなズレは起きません。
香典返し全体の流れやタイミングが気になる場合は、 香典返しはいつ?忌明け・相場・のし早見【遅れた時も】
で、のし表記や挨拶状のこともまとめて確認しておくと安心です。
香典返し・法事のお返しを頼むときのチェックポイント
実際にネットやギフトコーナーで注文するときは、次の3点だけ意識しておけば十分です。
1. 種類を確認する
・慶事用か弔事用か(のし付きか、掛け紙だけか)
・商品ページのどこかに「弔事用」「仏事用」などの表記があるか
分かりにくいときは、「葬儀・仏事の用途で使いたい」と店員さんに一言添えると安心です。
2. 水引の結び方と色
・結び切り/あわじ結びになっているか
・色は「黒白」か、地域で一般的な色(黄白など)か
ここまで整っていれば、よほど特殊な地域でない限り、大きく外すことはありません。
3. 表書き・名入れ
・表書きは「志」「満中陰志」「粗供養」など、地域でよく使う言葉を選ぶ
・迷ったときは、宗派を問わず使いやすい「志」が無難
・名入れは「○○家」「フルネーム」「代表者名+外一同」など、香典とのバランスで決める
喪主側の準備については、 喪主がやること全部リスト|失敗しない準備と心構えを葬儀社スタッフが解説
を見ながら進めると、返礼の段取りもイメージしやすくなります。
[PRボックス]弔事まわりであると安心な基本セット
Amazonやネットショップで探しやすい“弔事まわりの基本セット”も、例として挙げておきます。
[PRボックス]
・[弔事用 香典袋セット(黒白/黄白・多目的)]
・[薄墨対応の筆ペン]
・[慶弔両用ふくさ]
・[弔事用 のし紙・掛け紙セット(A4/ハガキサイズ)]
・[白無地封筒(長形・洋型ミックス)]
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よくある質問
Q1. 黄白と黒白、どちらを優先すればいい?
A1. 一番大事なのは「地域の習慣に合わせる」ことです。
関西・中部では黄白が主流の地域も多く、関東では黒白が基本というところがほとんどです。どちらが正しい/間違いというより、「その土地で当たり前に使われているほう」を選ぶのが、一番自然で無難な選び方です。
Q2. 葬儀も法事も、全部同じ香典袋でいい?
A2. 厳密に言えば「葬儀は黒白、四十九日以降の法事は黄白」といったルールがある地域もあります。ただ、一般の方がそこまで細かく使い分けていないケースも多く、現場では「その地域として問題ない範囲かどうか」が重視されます。迷うときは葬儀社やお寺に一言確認しておきましょう。
Q3. コンビニで買った香典袋でも大丈夫?
A3. きちんとした水引と表書きがあれば、コンビニの香典袋でも失礼にはあたりません。ただ、蓮の絵が入っているものは仏式専用だったり、蝶結びが混ざっていたりすることもあるので、購入するときに「黒白(または黄白)の結び切り」かどうかだけは確認しておきましょう。
Q4. 無地のしを使うと、失礼にならない?
A4. 「仏無地」の掛け紙であれば、弔事全般に使えるよう配慮されているので失礼にはあたりません。ただし、一般的な「無地のし(軽い贈り物用)」は、弔事を想定していないこともあります。パッケージに「仏事用」「弔事用」と書かれているか、水引の色が黒白・黄白になっているかを確認してから使うのがおすすめです。
Q5. 宗派ごとの細かい違いまでは覚えたほうがいい?
A5. 一般の方が全てを覚える必要はありません。基本的な考え方を押さえたうえで、「宗派や地域ごとの細かい違いは、お寺や葬儀社に確認する」くらいで十分です。この記事では、どの宗派でも大きく外れない「共通の土台」をお伝えしています。
まとめ
のし・水引のマナーは、本やサイトによって書き方が少しずつ違うため、「何が正解なのか」と迷いやすい分野です。
ただ、弔事については
・のしは付けず「掛け紙+水引」にする
・結び方は「結び切り/あわじ結び」
・色は「黒白」か、地域で一般的な色(関西なら黄白など)
このあたりだけ押さえておけば、現場の感覚としても十分きちんとした対応になります。
細かい違いで悩みすぎてしまったときは、「ここまで考えた自分は十分丁寧」と、一度自分に言ってあげてください。
あなたが迷いながら選んだ時間そのものが、故人への思いの深さでもあります。
のしや水引に正解を求めすぎず、「気持ち」と「現実」のちょうど良いところで、心が少し楽になる準備をしていきましょう。

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