遺言書とエンディングノートの違い――私らしい“想いの残し方”を見つけよう

はじめに:どっちが必要?と悩むあなたへ

「遺言書とエンディングノート、何が違うの?」
「どっちを書けばいいのかわからない…」

そんな声を、葬祭の現場ではよく耳にします。

実はこの2つ、目的も効力もまったく違うもの。
でも、どちらも“あなたらしい想い”を形にする、大切な手段です。

この記事を読めば、
あなたが本当に求めている「想いの残し方」のヒントが見つかり、未来の不安が少し軽くなるはずです。

エンディングノートの書き方ガイド|少しずつ、あなたらしい人生をまとめる

この記事でわかること

遺言書とエンディングノートの決定的な違い(法的効力/目的/保管)

自筆・公正・秘密証書遺言のざっくり特徴と保管の考え方

エンディングノートに向く内容(医療・介護・SNS・希望)と家族への伝え方

法務局の「自筆証書遺言保管制度」という選択肢

迷ったときのシンプルな選び方フロー

ワンポイント:法務局の遺言書保管

自筆証書遺言は法務局で原本保管ができるようになりました(自筆証書遺言書保管制度)。紛失・改ざんのリスクを減らし、相続開始後は証明書の交付も可能。まずは“保管できる”という事実だけ覚えておけばOKです。詳しくは法務省の案内へ。

3行まとめ

法的効力が要る内容は遺言書、気持ちや希望の共有はエンディングノート。役割を分けると迷いが消えます。

自筆なら法務局保管が安心、公正証書は公証人が方式を担保してくれる“安全確実”な方法。

ノートは家族が見つけられる場所と伝え方が命。保管と共有のコツは別記事で詳しく。→ 「エンディングノートはどこに保管する?」へ内部リンク。

違いをざっくり比較

項目 遺言書 エンディングノート
法的効力 あり(財産処分・相続分・遺言執行者の指定など。方式不備は無効リスク) なし(希望・メモ。相続の指示は不可)
主な目的 財産・相続・身分関係の最終意思を実現 医療・介護・葬儀・デジタル遺品・想いの共有
形式 自筆/公正/秘密証書。自筆は全文自書+日付・押印、公正証書は公証人が方式を担保 自由形式(市販ノート・自作・デジタル)
保管 自筆は法務局の保管制度で原本保管可/公正証書は公証役場で正本・謄本管理 自宅・クラウド等。家族が見つけられる場所+共有ルールが肝
費用・手間 自筆:低コスト(保管手数料あり)/公正:公証人手数料。専門家サポート可 低コスト。継続更新の手間は本人次第
更新のしやすさ 都度作り直し。最新日付のものが有効 自由に追記・差し替え可(更新日を明記)
証人など 自筆:証人不要(ただし検認 or 保管制度利用)/公正:証人2名が必要 不要
リスク対策 紛失・改ざんは法務局保管で大幅低減 未発見・未共有のリスク。パスワード管理に注意
開示タイミング 死後。相続開始後に手続へ 生前から家族と共有・参照
相談先 公証役場/弁護士・司法書士/各地の遺言書保管所(法務局) 家族・ケアマネ・葬祭ディレクター等
向いている人 相続分配・承継を確実にしたい 希望や連絡先・手順を家族に伝えたい
※医療・延命の希望は法的拘束力が弱いため、事前指示(ACP)や家族合意で補完を。遺言は「遺言執行者」の指定も検討。

エンディングノートはどこに保管する?家族とどう共有する?わかりやすく解説

遺言書が向いている人:法的な安心を求めたいあなたへ

相続トラブルを防ぎたい
→ 「まさか」の家族間の争いを避けたい方に。

特定の希望を法的に実現したい
→ 例:「長男には実家を継いでほしい」「特定の財産を寄付したい」

大切な人にしっかり意思を伝えたい
→ 財産、後見人、ペットの行き先なども指定可能。

法的効力が必要な人向け
→ 専門家のサポートも視野に。

エンディングノートが向いている人:心のバトンをつなぎたいあなたへ

医療・介護・葬儀・SNSのことも含めたい
→ 「延命治療の希望」「葬儀は家族葬に」「SNSはこうしてほしい」

気持ちを自由に残したい
→ 感謝の言葉、趣味のこと、推しへの想いも。

終活をこれから始める人に
→ スマホのメモアプリで始めてもOK。
まずは“思い出すこと”からスタート。

両方あると安心!私がそう思う理由

私はこれまで、数多くのご家族と「お見送りの現場」を共にしてきました。

  • 遺言書がなかったことで、財産分割の話し合いがまとまらず、
     お互いに深く傷ついてしまったご家族――
  • エンディングノートに書かれていた“たった一言”が、
     残された人の心を救ったというエピソードもあります。

たとえば、
「僕の好きだったバイクの音、最後に聞きたい」
というメモを見つけたご遺族が、
エンジン音を録音して、祭壇のそばでそっと流していました。

バイクを式場に入れたこともあります。

その音に涙した家族の姿が、今でも忘れられません。

だから私は伝えたいのです。
「法的な整理は遺言書で。心の整理はエンディングノートで。」
どちらも必要な“想いの橋渡し”です。

書くタイミングとおすすめの順番

まずはエンディングノートから!
→ 思いや希望を整理し、「こんなふうに生きたい」という未来像をメモしてみましょう。

必要に応じて、遺言書へ
→ 専門家に相談しながら、法的な形にしていけばOK。

どちらも「完璧」じゃなくていいんです。
まずは「1行」から、気持ちを残すことが大切です。

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まとめ:あなたらしい“想いの残し方”を選ぼう

大切なのは、「自分らしい形」で、“想い”を未来に残すこと。

まずは、スマホのメモ帳でも大丈夫。
「私の好きな曲」「ありがとうを伝えたい人」
——そんな一言からでも、あなたの大切な“生きた証”になります。

「禍福は糾える縄の如し」
人生には、良いことも悪いこともあるけれど、
だからこそ、“想い”を形にすることが、あなたと誰かの支えになる。

ほんの少しの時間を、自分自身のために使ってみませんか?

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