「お経って、意味がわからないまま聞いている」
「お坊さんが読むもの、という認識しかない」
そんな風に感じていませんか?
この記事では、葬儀の現場で多くのご家族を見送ってきた現役スタッフの視点から、
お経の本来の意味や役割について、わかりやすくお伝えします。
「これから初めてお葬式に参列する」という方や、「実は聞きそびれていたけど気になっていた」という方にも、“ホッとする”ような安心と理解を届けられたら嬉しいです。
この記事でわかること
- お経って何?──「経・偈(げ)・陀羅尼(だらに)」の違いと、葬儀・法要で唱える理由
- よく聞く代表的なお経の要点(般若心経/阿弥陀経/法華経 ほか)
- 宗派別の“ここだけは押さえる”ポイント(浄土真宗/真言宗/曹洞宗/日蓮宗 など)
- 参列時のマナー:意味がわからなくてもOK?宗派が違うときは?
3行まとめ
- お経は“仏教の教えの記録”。葬儀では故人を偲び、遺族が心を整える時間をつくる役割が大きい
- 代表格は般若心経/阿弥陀経/法華経/華厳経(宗派で重心が異なる)
- 宗派差は大切。例:浄土真宗は正信偈が中心で般若心経は通常唱えない、日蓮宗は法華経(方便品・自我偈)とお題目、曹洞宗は修証義・般若心経、真言宗は理趣経ほか。
お経ってそもそも何?
お経とは、もともと仏教の教えをまとめた経典(きょうてん)のこと。
サンスクリット語で「スートラ」と呼ばれ、それを中国語に訳したものが「お経」として日本に伝わってきました。
仏教にはさまざまな宗派がありますが、どの宗派でも「お釈迦さまの教え」が元になっています。
つまりお経は、「人生をどう生きるか」「命とは何か」を説いた、“仏さまの言葉”なのです。
・経(きょう):お釈迦さまの教えの記録(後世の編集・漢訳を含む総称)
・偈(げ):詩の形式の箇所(リズムがある/例:自我偈)
・陀羅尼:短い真言や章句の連続(記憶し唱えること自体に力点)
葬儀・法要では、故人の安寧を祈りつつ、遺族が“今を正す”時間としての意味合いが強い。
葬儀で読むお経の意味と目的
では、なぜ葬儀でお経を読むのでしょうか?
その目的は、大きく3つあります。
故人のためのお導き
お経は、亡くなった方が迷わず成仏できるようにという願いを込めて読まれます。
仏教では、死後すぐの魂はまだ不安定だとされており、読経によってその魂を安心させ、仏の世界へ導くと考えられています。
遺された人の心を整える
お経は、聞く人の心にも働きかけます。
大切な人を亡くした悲しみの中で、静かな読経に耳を傾けることで、
「命の意味」や「生きるということ」に気づきを得たり、自分自身の心を落ち着けたりすることができます。
仏さまへのご縁を結ぶ
葬儀は、亡き人と仏さまのご縁を結ぶと同時に、私たち自身も仏教に触れるきっかけになります。
読経を通して、仏さまの世界に思いを馳せる時間は、私たちが今をどう生きるかを考える「学び」の場でもあるのです。
宗派によって違う?お経の内容
日本には複数の仏教宗派があります。
そのため、読まれるお経の種類や節回し(メロディー)は宗派によって異なります。
たとえば:
- 浄土宗:『阿弥陀経』『無量寿経』など
- 浄土真宗:『正信偈(しょうしんげ)』『仏説阿弥陀経』など
- 日蓮宗:『法華経』
- 真言宗:『般若心経』『理趣経』など
内容は違っても、「仏さまの教えを伝えるもの」であることに変わりはありません。
お経に意味はあるの?
「意味も分からないし、聞いても退屈」と感じる方もいるかもしれません。
でも実は、お経には深い意味があります。
たとえば『般若心経(はんにゃしんぎょう)』では、
「すべての物事は移ろいゆくものであり、それに執着しないことで心が救われる」というような内容が説かれています。
意味を知らなくても、お経を聞いて「なんとなく落ち着いた」「涙が出た」という方も多いです。
それは、お経が“音”としても心に響く力を持っているからです。
読経に込められた思い
お坊さんが読むお経には、単なる儀式以上の「想い」があります。
葬儀の読経には、「この方が安心して旅立てますように」「ご遺族の悲しみが少しでも和らぎますように」という祈りが込められているのです。
また、同じお経でも、お坊さんの声や抑揚、間の取り方によって印象は大きく変わります。
心を込めて読まれるお経には、人の心に響く“何か”が宿っているのです。
よく聞く代表的なお経・超要点
般若心経(はんにゃしんぎょう)
- 「空(くう)」=物事は固定実体ではない、という洞察へ導くお経の要約
- 天台・真言・禅(曹洞)・浄土宗など広く読まれるが、浄土真宗や日蓮宗では通常読まれない。
阿弥陀経(あみだきょう)
- 極楽浄土の世界と往生の道を説く。浄土宗・浄土真宗の中心的経典(浄土三部経の一つ)
法華経(ほけきょう)
- 「万人救済(一乗)」を柱に、方便品(第二)/如来寿量品の自我偈がコア。日蓮宗はここ+お題目(南無妙法蓮華経)が基本。
華厳経(けごんぎょう)
- いのちが相互に支え合う世界観(“網の目のように縁起で結ばれる”)を描く大部の経
ほか、曹洞宗は「修証義」(道元の教えを明治に在家向けに編集)を大切にする。
真言宗は「理趣経」や大日経系テキスト、大悲心陀羅尼など密教系の読誦が特徴。
参列マナーQ&A
Q. 意味がわからなくても大丈夫?
A. およそ問題なし。姿勢・所作(合掌・黙礼・焼香)が大切。耳を澄ませるだけで心が落ち着く効果があると言われます。
Q. 宗派が違うけど、般若心経を唱えてもいい?
A. 参列者が無理に唱える必要はない。宗派によっては通常読まない(例:浄土真宗・日蓮宗)ため、黙礼で可。家での写経・唱和は個人の信仰として自由。
Q. どの場面で何を読むの?
A. 枕経/通夜/葬儀/初七日〜四十九日/年忌で、所属宗派の“常の経”を中心に。寺院・僧侶の指示が最優先。
小さな用語メモ
- 読経(どきょう):お経を声に出して読むこと
- 回向(えこう):積んだ善い行い(功徳)を他者にふりむける祈り
- お題目(おだいもく):日蓮宗で唱える「南無妙法蓮華経」のこと
写経・自学用:写経セット(般若心経)|大きな文字の経本(正信偈/法華経)|低煙のお線香|数珠(男性用/女性用)
まとめ:お経は“心の処方箋”
お経は、ただの儀式の一部ではありません。
故人を仏の世界へ導くための言葉であり、残された私たちが「生きる意味」を見つめ直すためのきっかけでもあります。
聞いて意味がわからなくても大丈夫。
「何か温かいものを感じた」「涙が出た」…その感覚こそが、お経があなたの心に届いた証拠です。
もし機会があれば、次にお経を聞くときは、
「どんな気持ちで読まれているのかな?」「何を伝えようとしているのかな?」と、少しだけ耳を傾けてみてください。
きっと、これまでとは違った時間になるはずです。
このブログでは、終活や仏事について、誰にでもわかりやすく、やさしく伝えていきます。
気になるテーマがあれば、ぜひ他の記事も読んでみてくださいね。
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