「お盆に身内が亡くなったら、葬儀はお盆明けになるの?」
「火葬場が空いていれば、すぐに日程を決められる?」
突然のことなら、少しでも早く葬儀の日程を決め、家族や親族へ知らせたいと思うのは自然なことです。
結論からいうと、お盆だからという理由だけで、葬儀ができなくなるわけではありません。
ただし、仏式で菩提寺へ読経をお願いする場合、火葬場や式場が空いていても、僧侶の予定が合わず、葬儀日程をずらさなければならないことがあります。
葬儀が遅れる原因というと、火葬場の混雑を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし現場には、「火葬場も式場も空いている。けれど、お寺さんが来られない」という詰まり方もあります。
この記事では、お盆前後に葬儀日程が決まりにくくなる理由と、日程が延びたときに家族が確認したいことを、一級葬祭ディレクターの現場目線で整理します。
この記事でわかること
- お盆中でも葬儀を行えるのか
- お盆に僧侶の予定が合いにくくなる理由
- 火葬場が空いていても日程が決まらない事情
- 葬儀までの日数が延びたときの確認事項
- 急いで葬儀をしたい場合の相談方法
3行まとめ
- お盆中でも、火葬場・式場・宗教者の予定が合えば葬儀はできます。
- 棚経や初盆法要などで僧侶の予定が集中し、希望日からずれることがあります。
- 菩提寺を飛ばして別の僧侶へ依頼せず、まず日程や代理対応を相談しましょう。

お盆でも葬儀はできる。ただし「すぐ決まる」とは限らない
お盆だからといって、葬儀を行ってはいけないという全国共通の決まりはありません。
火葬場、式場、葬儀社、宗教者の予定が合えば、お盆中でも通夜・葬儀・火葬を行えます。
ただし、お盆の時期や行事は全国一律ではありません。7月に行う地域もあれば、8月に行う地域もあり、宗派や寺院によって考え方も異なります。浄土真宗本願寺派の公式案内でも、7月と8月のお盆が紹介されています。
そのため、「8月13日から16日までは葬儀ができない」「お盆中でも普段とまったく同じ」と、どちらかに決めつけることはできません。
大切なのは、お盆という言葉だけで判断せず、実際に利用する火葬場・式場・菩提寺へ確認することです。
お盆の意味や、地域・宗派による供養の違いは、お盆に何もしないのはだめ?仏壇なし・帰省できない時の供養で整理しています。
葬儀日程を左右するのは、火葬場だけではない
葬儀日程は、空いている式場を予約するだけでは決まりません。
仏式葬儀では、主に次の予定を合わせます。
- 家族と主な親族
- 菩提寺や宗教者
- 葬儀式場
- 火葬場
- 葬儀社の担当者や車両
火葬場が空いても、式場が使えなければ葬儀はできません。式場も空いていても、僧侶が来られなければ、予定していた仏式葬儀は行えません。
葬儀の日程調整とは、故人を中心に、家族・施設・宗教者それぞれの時計を一つに合わせる作業です。
一か所でも予定が合わなければ、候補日が見えていても葬儀日はまだ「未定」です。
通常の流れは、葬儀の流れ|亡くなってから通夜・葬式・火葬まででも時系列で解説しています。
お盆は「お寺も休み」ではなく、むしろ忙しい
お盆だからお寺も休んでいる、というわけではありません。むしろ逆です。
お盆は、寺院にとって供養の予定が集中しやすい時期です。
たとえば、お盆中に僧侶が檀家の家を訪ね、仏壇や盆棚の前で読経することを「棚経」といいます。浄土宗の公式サイトでも、棚経は菩提寺などへお願いし、僧侶を招いてお経をあげてもらうものと説明されています。
このほか、初盆・新盆の法要、寺院での合同法要、檀家宅へのお参り、通常の法事や葬儀が重なることもあります。
本堂で静かに座っている姿とは反対に、夏のお寺さんはかなり「動」です。
もちろん、すべての寺院が同じ忙しさではありません。僧侶が複数いる寺院と、住職一人で対応している寺院でも事情は変わります。
それでも、お盆前後は普段より日程の選択肢が少なくなる可能性を考えておいた方がよいでしょう。
現場では「お寺さん待ち」になることがある
葬儀の現場では、次のような場面があります。
「火葬場は○日が空いています」
「式場も使えます」
「ご家族も集まれます」
「ただ、菩提寺がその日は来られません」
ここまで三つそろっていても、最後の一つが合わなければ日程は確定できません。
一級葬祭ディレクターとして現場に立ってきましたが、お盆前後には、火葬場よりもお寺の予定が最後まで決まらないことがあります。
家族からすると、「火葬場が空いているのに、なぜ葬儀ができないの?」と感じるかもしれません。
しかし、菩提寺へ読経をお願いする葬儀では、僧侶は単なる来場者ではなく、葬儀を執り行う宗教者です。
先に火葬場と式場だけを確定し、あとから「この日に来てください」と伝えても、すでに棚経や法要の予定が入っていれば対応できないことがあります。
これは「お寺さんが動いてくれない」のではありません。別の家の供養のために、すでに動いているということです。
菩提寺があるなら、日程を決める前に第一報を入れる
菩提寺がある場合は、葬儀社への連絡や搬送・安置を進めながら、できるだけ早く亡くなったことを伝えます。日程がまだ決まっていなくても構いません。
電話では、次のように伝えれば十分です。
「檀家の○○です。本日、父の△△が亡くなりました。現在、葬儀社と搬送・安置を進めています。通夜と葬儀の日程について、ご都合を相談させてください」
菩提寺から候補日や時間帯を聞き、葬儀社が火葬場・式場の空きと照らし合わせます。
親族への連絡も、日程が確定するまでは「現在、火葬場・式場・菩提寺と調整中です。決まり次第、改めて連絡します」と伝える程度が安全です。
親族のグループLINEへ「たぶん○日」と流すと、変更になったとき、同じ人数分だけ訂正が待っています。
急いでいるときほど、未確定の情報を広げないことが家族の負担を減らします。
日程が延びたら、安置場所と追加費用を確認する
僧侶の予定に合わせて葬儀日をずらすと、安置期間も長くなります。
日程が延びること自体が悪いわけではありません。問題になりやすいのは、延長に伴う条件が曖昧なまま進むことです。
葬儀社には、次の点を確認してください。
- 葬儀当日まで同じ場所に安置されるか
- 安置施設の利用料は何日分まで含まれているか
- 延長した場合の安置料はいくらか
- ドライアイスや保全処置は何日分まで含まれているか
- 面会できる時間・回数・人数に制限はあるか
- さらに日程が延びた場合、何が追加になるか
まとめて聞くなら、次の一言で十分です。
「葬儀が○日になった場合、安置料、ドライアイス、面会などで追加になる費用と条件を、すべて教えてください」
一日延びたときに、何がいくら増えるのかを先に確認しておけば、あとから家族が驚かずに済みます。詳しくは、葬儀の追加費用はどこで増える?安置・搬送の確認ポイントをご覧ください。
急いで葬儀をしたい場合も、まず菩提寺へ相談する
仕事や親族の移動、故人の状態などから、できるだけ早く葬儀をしたい事情もあるでしょう。
その場合も、菩提寺に無断で別の僧侶を呼ぶ前に、次の対応ができないか相談します。
- 寺院内の別の僧侶が対応できないか
- 同じ宗派の寺院を紹介してもらえないか
- 開式時間を変えれば来てもらえるか
- 通夜と葬儀の組み方を調整できないか
- 火葬後に改めて法要を行う形が可能か
一日葬にする、読経をせず直葬にする、といった変更は、家族と葬儀社だけで決めない方が安全です。
一日葬は、単なる「日程短縮の裏技」ではありません。宗教儀礼の形そのものを変える選択です。
菩提寺や寺院墓地がある場合は、葬儀後の戒名・法名、納骨、今後の法要にも関わります。全日本冠婚葬祭互助協会の案内でも、菩提寺とは別の寺院へ依頼すると、納骨や戒名の扱いで調整が必要になる場合があると説明されています。
「今日の葬儀をどうするか」だけでなく、「その後、どこへ納骨し、誰に供養をお願いするのか」までつなげて考える必要があります。
菩提寺がない場合は、葬儀社へ相談する
特定の菩提寺がなく、仏式で葬儀をしたい場合は、葬儀社から僧侶を紹介してもらえることがあります。
希望する宗派、読経の範囲、戒名・法名の有無、お布施の目安、葬儀後の法要を依頼できるかを確認しましょう。
将来、寺院墓地へ納骨する予定があるなら、その寺院の考え方も先に確認してください。葬儀だけを無事に終えることと、その後の納骨や供養まで無理なく続けられることは、同じではありません。
平時に確認できるなら、菩提寺の名前と電話番号、宗派、墓地・納骨堂の管理者だけでも家族で共有しておきましょう。葬儀の事前相談チェックリストにも、家族で確認しておきたい項目をまとめています。
まとめ|死は予約なしに訪れ、葬儀は調整で成り立っている
お盆中でも葬儀はできます。
ただし、仏式で菩提寺へ読経をお願いする場合は、棚経や初盆法要などで僧侶の予定が埋まり、希望日に葬儀ができないことがあります。
火葬場も式場も空いている。家族も集まれる。それでも、お寺さんが来られなければ日程は決まりません。
人が亡くなる日は選べません。死は、火葬場やお寺の空き状況を見て来てはくれません。
その一方で、葬儀は驚くほど多くの予定を合わせて成り立っています。
日程が延びると、「待たされている」と感じることもあるでしょう。しかし、その時間が、故人との別れを整え、家族と菩提寺との関係を守るために必要な場合もあります。
早く見送ることだけが、よい葬儀ではありません。必要な確認を行い、家族があとから困らない形で見送ることも、大切な葬儀の一部です。

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